2017 Fiscal Year Research-status Report
対話的法実践の法社会学―調停・交渉の相互行為分析と訓練プログラムの開発・評価
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17K03326
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
北村 隆憲 東海大学, 法学部, 教授 (00234279)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
入江 秀晃 九州大学, 法学研究院, 准教授 (50600029)
仁木 恒夫 大阪大学, 法学研究科, 教授 (80284470)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 調停 / 法的交渉 / 法社会学 / 法的コミュニケーション / エスノメソドロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は年度初めから計画・準備した模擬調停実施を含む調査を2回実施した. 第1回目調査では,弁護士や司法書士6名に被験者になってもらい,模擬対面型調停における調停人役をしていただいた.調停は約1時間45分(何らかの区切りや終結の「合意」がなされた場合にはそこで終了)で,当事者役は一般市民から選んだ.紛争事案は,あらかじめ作成して,当日簡単なメモが渡され,詳細は調停のなかで当事者から知らされた.調停の模様はすべてビデオ録画し,調停終了後,「振り返り」セッションを開催した.また,第2回目調査では,ビデオデータについての研究者による分析の報告についてディスカションを実施した.これ等のディスカッション場面についてもすべて録画を行った.また,当事者と調停人にアンケート調査を行った.
対面調停により同じ事案を6名の調停人に本格的な模擬調停を行う調査はわが国で初めてとおもわれる.
ビデオデータ(模擬調停,振り返り会,当事者役へのインタビュー,などの録画データ)はすべて書き起こしを作成し,共同研究者により,①調停実践家からの分析,②民事訴訟法学者による分析,③社会学のエスノメソドロージーの観点からの社会学的分析,の3つの視点から現在分析を行っている.この分析により,今までほとんど研究されることのなかった,調停(ミディエーション)のコミュニケーションのプロセスについて,その構造とメカニズムの一端が解析され,その知見を調停実践にどのように応用するかが検討されることになる.これ等は国際的にみても初めての試みといえる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画において考案した本計画の2つの側面である,①<調停・交渉の相互行為分析>分担者入江が各地で実施する調停研修会及びその他の調停・交渉場面での言語的・身体的相互行為をビデオ録画し,そこから詳細なトランスクリプトを作成し相互行為分析を行い調停相互行為のメカニズムを同定する.②<相互行為分析の知見に依拠した訓練教材とプログラム開発>が,双方とも順調に進行しつつあり,本園度中葉からは,①による相互行為分析の知見を応用して,調停・交渉研修プログラムと教材の開発を行うが,②の実践応用と①の相互行為分析とを相互的に発展させるサイクルを確立していく予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度を含みそれ以降は,研究計画の2側面を一層進行させる.まず,①調停・交渉のコミュニケーションは調停人と紛争当事者との協同的なワークにより達成される産物である.その協同的な相互行為過程の詳細を経験的に調査・分析することによって、調停・交渉の協働プロセスにどのような機能とメカニズムが存在し、どのような(秩序だった)方法や知識が用いられ,当事者の自律的紛争解決力を促進させるとされる対席調停の「自律支援」が相互行為上どのように達成されているのか、等を考察する.また,同時に,②上記の分析知見を,調停・交渉についての「反省的実践者」の育成・訓練プログラムと教材として開発する.
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Causes of Carryover |
録画関連資材の購入を次年度に持ち越したものがあったから.次年度にこれと合わせて購入予定である.
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Research Products
(3 results)