2019 Fiscal Year Annual Research Report
On the critical sight of judges to Taiwanese custom and resistance of Taiwanese to this sight in the Japanese colonial period
Project/Area Number |
17K03327
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
後藤 武秀 東洋大学, 法学部, 教授 (90186891)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 一夫多妻制 / 妾 / 祭祀公業 / 慣習法 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本統治時代の台湾においては、旧慣と呼ばれる慣習の尊重が基本方針とされ、司法の場においても家族、土地などに関する慣習が規範としての効力を有することとされた。しかし、日本人の裁判官はいくつかの慣習について批判的な意見を開陳し、これを批判してきた。そのような司法の場における慣習に対する評価が台湾社会にどのような影響を与えたかを検討することを目的とした。本年度は前年度に引き続き族譜に見られる妾の数量的変化を実証的に検討した。対象とした族譜は、台南の安平高氏等であるが、安平高氏大世譜には特徴的な表現が認められた。すなわち、正妻とは別に妾を置く場合に、再娶という表現と妾という表現を併用していることである。このような表現は他の族譜には見られないところである。明治末年から昭和初期にかけても妾の存在が明記されており、一夫一妻多婦の慣習が維持されていたといえる。また、銀江李氏家乗では、妾に位置する婦人には側という表現を使用しており、明治末年以降もこの慣習が維持されていることがわかる。これらのことから、司法の場において妾の慣習に対して批判的な見解が示されたにもかかわらず、台湾社会ではこの慣習が維持されたと考えられる。他方、土地に関する慣習の1つである祭祀公業については、その解体がたびたび提唱されはしたが、日本統治の全時期を通じ、法制度の強制によってこれを解体するには至らなかった。昭和になってからも、存続か解体かの議論が進められたが、特に司法関係者による全島座談会において、解体と存続の双方の場合のメリットとデメリットが整理された。その議論の状況について検討した。以上に加え、台湾社会の位置を南中国の一部と位置付け、南中国の慣習との相違点を検討した。とりわけ、現在進められている中国の一帯一路政策により慣習の浮き彫りになってきた香港、マカオとの比較のための準備に着手した。
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