2019 Fiscal Year Annual Research Report
Political Obligation and Democratic Outsiders
Project/Area Number |
17K03329
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
瀧川 裕英 立教大学, 法学部, 教授 (50251434)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 権威 / 政治的権威 / 政治的正統性 / 民主的決定 / 認識価値 / 政治的責務 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、民主的決定は権威を持つか、持つとすればその根拠は何かという問いを、理論的に検討し解明することにより、民主的決定のいわば外部にいる存在、具体的には外国人・未成年者・受刑者などを視野に入れた政治的責務の正当化論を構築することである。この目的を達成するため、令和元年度は、過去2年間の研究を踏まえつつ、二つの作業を行った。 第一に、民主的決定の外部にいる存在を視野に入れた政治的責務の正当化論の構築を試みた。今年度は、過去2年の研究成果に基づいて、<民主的権威の根拠は民主的決定の認識価値に求めることができるため、民主的決定手続に参与できない者も民主的決定に従う理由を持つ>という理論仮説を提示し、それを論証すべく検討を行った。 第二に、本研究の成果全体を公表した。ルツェルン(スイス)で開催された第29 回IVR(法哲学・社会哲学国際学会連合)世界大会において、民主的権威をテーマとするスペシャル・ワークショップを主催し、研究成果を報告しつつ内外の研究者と連携して研究を進展させた。関連して、モントリオール(カナダ)で開催された国際公共政策学会において、民主的権威に関する報告を行った。また、民主的権威の意義を確認すべく、民主制と抽選制を対照して検討する論考を公表した。さらに、私が提示した包括的な政治的責務正当化論に対するコメントにリプライすることで、その理論を深化させる論考を複数公表した。 以上の作業を含め、研究期間全体を通じて、民主的決定の権威について認識価値に基づく理論を構築した。民主的決定は、民主的決定手続に参与できない者、具体的には外国人や未成年者や受刑者に対しても、民主的決定は正統な権威を持つと考えられている。だがそれはなぜか。この重要な問題に対して、権威の正統性という基本問題に立ち返って検討することで、基礎理論に支えられた議論を構築した。
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