2019 Fiscal Year Research-status Report
On the Anglo-American Tradition of Rule of Law-Suggestions for the Japanese Legal System
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17K03332
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
戒能 通弘 同志社大学, 法学部, 教授 (40388038)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 法の支配 / コモン・ロー / 法実証主義 / 功利主義 / 共和主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、英米の法の支配の歴史、思想史を包括的に検討するとともに、わが国の法の支配研究、立憲主義の研究に厚みを与えることを目的としている。令和元年度は、ベンサムの法の支配論についての研究を進めることができたと考えている。平成30年度には、様々な国際学会で報告したが、それらの成果を海外の学術雑誌などで公表することができた。まず、明治時代の日本のベンサムの影響について検討した論文を、海外の出版社から公刊された共著において刊行した。また、パリ大学のベンサム研究所の研究紀要で、「日本のベンサム研究」という特集を組んでもらい、その編集をさせていただいた。そこでは、ベンサムの法理論とコモン・ローの理論を比較する論文を公刊しているが、法の支配という観点からも、ベンサムについて論じることができたと考えている。さらに、海外の学術誌における「世界のベンサム研究」という特集にも、日本におけるベンサムの受容について検討している論文を寄稿し、そちらも公刊されている。ベンサムの憲法典がどのように受容されたかを論じる過程で、ベンサムの法の支配論の日本への影響について検討できたと考えている。なお、ロンドン大学ベンサム・プロジェクトの長であるフィリップ・スコフィールド氏の『功利とデモクラシー』を共訳して刊行した。近年のベンサム研究の最大の成果と言われているものであるが、ベンサムとそれ以前のイギリスの法の支配論の比較という観点からも、様々な示唆を得ることができたと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
この研究課題は、コモン・ローの法の支配論、ベンサムの法の支配論とその後継と考えられるダイシーなどの法実証主義的な法の支配論を包括的に検討することを目的としている。ベンサムの法の支配論は、これまであまり論じられることがなかったものであるが、近年、ジェラルド・ポステマ教授によって示されている視点である。そのポステマ教授のベンサムの法の支配論についての研究を検討する論文をすでに執筆しており、海外のジャーナルに寄稿している。その論文では、統治者の答責性を保障するために、世論法廷を活用していたというポステマ教授のベンサム解釈に同意しつつも、そのような解釈では、少数者の権利保障という意味での法の支配という観点をベンサムに見出すことが難しいのではないかと論じている。そして、少数者の権利保障も含めた普遍的利益をデオントロジスト(知識層)による世論の啓発によって実現することをベンサムは考えていたと主張している。これは、人々の選択の環境を整えることで、人々を普遍的利益に適う選択に誘導するという、ベンサムの間接立法論に着目した理解であり、現代的な意義が認められる法の支配論をベンサムから導くことができ、「ベンサムと法の支配」というテーマでは、一定の成果を得ることができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、特に近現代のアメリカの法の支配論について検討を進めていく予定である。ベンサムの法の支配論、イギリスの法実証主義的な法の支配論については、その現代的な意義も含めて検討している論文が、順調に行けば令和二年度中には、海外の専門誌に掲載される予定である。さらに、令和二年度においては、近現代のアメリカの法の支配論について検討を進めて行ければと考えている。法思想史の教科書(共著)を執筆中であり、そこで歴史法学など、本研究で対象としている法の支配論についても執筆している。令和二年度中には、さらに、「コモン・ロー立憲主義」など、アメリカの法の支配論の現代的展開について考察を深め、勤務校の紀要などに論文を発表していこうと考えている。
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Causes of Carryover |
令和元年度にはアメリカの法の支配論の現代的展開についての著書を中心に資料を収集する予定であった。しかしながら、イギリスの法実証主義的な法の支配論に関連する論文をいくつか公刊するために、イギリスの法の支配論の資料の収集に専念する必要が生じている。次年度は、「コモン・ロー立憲主義」など、アメリカの法の支配論の資料の収集にも努めたい。
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Research Products
(9 results)