2021 Fiscal Year Research-status Report
On the Anglo-American Tradition of Rule of Law-Suggestions for the Japanese Legal System
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17K03332
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
戒能 通弘 同志社大学, 法学部, 教授 (40388038)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 法の支配 / コモン・ロー / 法実証主義 / 功利主義 / 議会主権 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、英米の法の支配の歴史、思想史を包括的に検討するとともに、わが国の法の支配研究、立憲主義の研究に厚みを与えることを目的としている。 令和3年度は、イギリスに特化した形にはなったが、ベンサムの法の支配について、考察を深めた成果を公刊することができた。まず、ベンサムの法の支配論に関して2018年にドイツで開催された国際功利主義学会で報告した原稿がProceedingとして公刊されている。また、ポステマ教授のベンサム論についての批評的な論文が、Ratio Jurisにて公刊されている。そこでは、その後の時代のダイシーの法の支配論と比較するような形で、さらには、ポステマ教授のベンサム理解を補足するような形でもベンサムの法の支配論を論じることができたと思われる。具体的には、ベンサムの法の支配論を考える上で、ポステマ教授が示したような、世論法廷による公職者のコントロールだけではなく、公職者によって少数者の権利が侵害されるような際に、ベンサムが「間接立法」、「デオントロジスト」などにより、世論を方向づけようとしていたことの重要性が示せたと思われる。 イギリスの法の支配の思想史的な検討については、これまでも一定の成果を示せたと考えているが、令和3年度においては、「世論の方向づけ」という、ベンサムの法の支配論の重要な特徴を抽出することができたと考えている。同様に、アメリカの法の支配の思想史の考察、法思想史におけるイギリスとアメリカの法の支配論の比較という点も、一定の成果を出すことができたと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究で、イギリスの法の支配の特徴については、十分に検討できたと考えられる。令和2年の時点では明確にできていなかった、ベンサムの法の支配構想における「世論の方向づけ」の重要性についても、令和3年度で検討することができた。ただ、そのような新しい論点をベンサムに見つけたため、ダイシーの政治的主権による法的主権のコントロールとベンサムの議論との比較的考察をする必要性は生じている。さらに、アメリカの法の支配論についても、イギリスとの比較をこれまで以上に進める必要はある。
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Strategy for Future Research Activity |
ベンサムの法の支配構想における「世論の方向づけ」とダイシーの法の支配論を比較することで、イギリスの法の支配論の特徴をより明確に示すことができると思われる。そこで参考になるのが、19世紀後半のイギリスの法の支配について裁判実務に注目して論じられているロバーン教授の Imperial Incarceration(2021年)という著書であろう。また、これまでの研究で、法思想史の範囲では検討を進めることができているアメリカの法の支配について、「コモン・ロー立憲主義」など、より現代的な理論についても検討を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
国際学会も延期になり、現代アメリカの法の支配論について考察を深めることが難しかった。また、イギリスの法の支配における「世論の方向づけ」という新しい論点について、検討する必要を感じている。今年度は、コモン・ロー立憲主義など、現代のアメリカの法の支配論についての理解を深めるため、7月のIVR(国際法哲学・社会哲学学会連合)の研究大会(ルーマニア)での報告を考えている。現在の東欧情勢で難しくなるような場合は、イギリスの法の支配における「世論の方向づけ」という点について、Imperial Incarceration(2021年)の著書でもあり、知己もあるLSEのロバーン教授と意見交換をするとともに、資料を集めるためにイギリスを訪問することも考えている。
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Research Products
(2 results)