2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K03333
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
武藏 勝宏 同志社大学, 政策学部, 教授 (60217114)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 制定法文書 / 承認型手続 / 否認型手続 / 非対称的二院制 / 両院間調整メカニズム / ソールズベリー慣行 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、イギリス貴族院における制定法文書の審査・承認権限を検証し、委任立法に対する議会の権限と役割を二院制と委任立法への議会の統制の有効性の観点から考察することを目的として実施された。今年度は、まず、二院制が有する役割を比較法的視点から考察するため、日英の比較を中心に、レイプハルトとラッセルの研究を参考に、先進民主主義国14か国の比較を行った。その結果、イギリスの貴族院は、他の先進各国と比較し、任命制を主として第一院の再議決権が単純多数で可能など、単一国家の下で、非対称的な二院制であることを指摘した。このような、非対称的な役割に過ぎない貴族院も、委任立法に関しては、議会制定法律(一次立法)と異なり、議会法の適用除外とされ、両院間の議決の不一致による解決方法が存在しない。また、委任立法の件数自体が年間3000件を超すなど、その政策形成における比重は看過できないものがある。そこで、今年度は、イギリス貴族院において、2015年の審議で貴族院が不承認としたタックス・クレジット削減規則案を事例に、貴族院が不承認とした委任立法に関する議会、政党、政府の相互作用と、そこにおける貴族院の権限の見直しについての議論の分析を行った。さらに、こうした委任立法に対する議会の承認制度の比較考察の観点から、英仏独日の比較分析を行い、イギリス議会の承認制度が、制度としてもっとも整備されたものであり、他方で、日本の国会の委任立法に対する統制がもっとも制度化されていないことを指摘した。以上の研究実施を通じて、政府側による恣意的な運用が行われる懸念がある委任立法の増加に対応し、議会側が政府統制のための有効な監督権限を行使し、同時に両院関係における貴族院の役割の発揮が可能となるような制度・運用についての一定の視座と改革の方向性を提示することが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、二院制における両院関係、ねじれが生じた場合の立法過程の状況等について日英の比較を中心に、先進民主主義国14か国の比較を行った。次に、イギリス貴族院において2015年10月に不承認とされたタックス・クレジット削減規則案のケーススタディと同不承認の結果を受けて、政府側の依頼に基づいて作成された貴族院の制定法文書に関する権限見直しの報告書(ストラスクライドレビュー)の分析を行った。さらに、委任立法に対する議会の統制について、英仏独日の比較分析を行い、イギリスとフランス、ドイツにおいて議会の承認が制度化されているのに対し、日本では議会の承認権限が制度化されていないことを指摘し、その改革案について考察した。以上の研究成果についてはそれぞれ論文として公刊するとともに、委任立法に対する議会の統制に関する比較分析の報告を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度は、2017年度に実施した先行研究のレビューや文献調査、データの収集分析、個別事例研究などをさらに発展させ、イギリス貴族院がなぜ、他国の議会と比較して、第二院として委任立法の統制に関して、第一院よりも、積極的かつ相対的に優位性を有しているのかを、理論、実証の両面から分析することとする。加えて、こうした議会の委任立法の統制を行政統制、行政監視の視点からとらえ、英仏独日の議会の行政監視機能の比較を行うことで、イギリスの議院内閣制及び二院制のもつ特徴とその意義について分析を深めることとする。研究成果については、学会報告等で公開し、内外の研究者からの意見を研究方法や考察にも反映させていくこととしたい。
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Research Products
(5 results)