2017 Fiscal Year Research-status Report
「法と感情」の系譜学ースコットランド啓蒙思想を中心として
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17K03337
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
橋本 祐子 龍谷大学, 法学部, 教授 (80379495)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 法と感情 / 法哲学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、法と感情の関係性について探求する「法と感情(Law and Emotion)」という新たな研究領域に着目する。学際的な研究領域である「法と感情」研究の全体像を把握したうえで、「法と感情」研究の重要な思想史的源泉の一つをスコットランド啓蒙思想に求め、特に道徳感覚ー正義ー法の関係性について重点を置きつつその現代的意義を探究することをめざすものである。 平成29年度においては、まず、「法と感情」研究の動向を把握し整理するために、主に英米圏の「法と感情」研究の位置づけに関する文献を収集し精読に努めた。1980年代から1990年代初期にかけて始まったとされる現代の「法と感情」研究は、当初は理性/感情という二項対立的な捉え方に対する批判に重点が置かれていたが、その後、認知科学や脳神経科学などによる感情メカニズムの研究が進展するに伴い、それらの研究成果を反映させて特定の法分野・法過程における感情のはたらきを解明しその実践的含意を追求する方向へと発展してきている。このように現代の「法と感情」研究は学際的な色彩の強い研究領域ではあるが、その根底には「法と感情」研究の当初の出発点であった「理性的な法」対「感情」という二元的理解への批判的視座があり、その意義は失われていないことを確認した。 また、スコットランド啓蒙思想の重要な論客の一人である A. スミスの『道徳感情論』、『法学講義』のテキストを精査し、スミスの理論における法と道徳感覚の関係を明確化することに努めた。スミスの共感理論を手がかりの一つとして、刑事司法における応報感情の位置づけについて考察した結果を、「刑事司法における『感情』の所在:応報を中心に」としてまとめて公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「法と感情」研究の動向に関して、その全体像を俯瞰することはできたが、個別の学際的研究の成果の整理については順調に進めることができなかった。また、スミスの共感理論に関する内在的な考察を論文としてまとめるまでには至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、認知科学のアプローチを用いた「法と感情」研究における研究蓄積も整理しつつ、現代の「法と感情」研究の動向の把握に努める。また、道徳感覚ー正義ー法の関係性という観点からのA. スミスの共感理論に関する考察を早急に進めて論文にまとめ、その上で、当初平成30年度に予定していたD. ヒュームの理論の検討に移る。
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Causes of Carryover |
当初予定していた国外調査を事情により遂行することができなかったために次年度使用額が生じた。2018年12月に香港大学にて開催される東アジア法哲学大会への参加費用やスコットランド啓蒙思想関連図書の購入費用にあてたいと考えている。
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Research Products
(1 results)