2018 Fiscal Year Research-status Report
フランスにおける宗教的着衣規制と「公序」の抽象化に関する研究
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17K03344
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
中島 宏 山形大学, 人文社会科学部, 教授 (90507617)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 信教の自由 / ニカブ禁止 / 公序 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、ヨーロッパ人権裁判所やフランス国内裁判所によって出された新たな判例分析にとりくんだ。特に、ヨーロッパ人権裁判所が下した2017年のダキル事件およびベルカセミ他事件は、ベルギーのニカブ禁止法を条約に反しないと判断した判例であり、重要である。同裁判所は2014年のブルカ禁止法条約適合判決において、抽象的な「公序」としての「共生」を目的としたブルカ禁止の正当性を既に認めていたが、今回の2017年判決においてもその正当性が認められた。但し、①男女平等や人間の尊厳の確保を目的としたに禁止は認められず、②ブルカやニカブに一般的危険性が認められるわけではないため、公的安全の確保を目的とした一般的禁止も認められないという点に注意が必要である。また、今回も禁止立法の間接差別性は認められなかった。ヨーロッパ人権裁判所の「謙抑的姿勢」が強くなっているとの指摘がある。本件については、学会紀要において判例評釈を公表した。 併せて、前年度に分析を加えた2つの事件、上記2014年欧州人権裁判所ブルカ禁止法条約適合判決とフランスにおけるブルキニ禁止命令事件の分析と共に、キリスト生誕模型事件を学会紀要において紹介した。キリスト生誕模型事件は、公共の場所に設置されたキリスト生誕模型像の政教分離との整合性が問題となった事件である。 また、2019年1月に実施されたフランス首相府の憲法解釈担当者へのインタビューに参加し、ブルカ禁止法に関する公式解釈・見解の立案について質問を行った。実務者に対する意見聴取として大変参考になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に示した通り、新たな判例の分析を通して、ヨーロッパ人権裁判所の立場と基本的姿勢を明らかにすることができた。研究実施計画において予定していた欧州レベルの「公序」の抽象化について、一定程度明らかにすることができたのではないかと思われる。また、フランスの実務者に対するインタビューに参加し、抽象的公序に関する文献を現地で入手することができた。このような点から、研究活動はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実施計画に予定していた通り、前年度および本年度の研究成果を踏まえて、抽象的公序の概念と問題点を研究成果としてまとめたい。特に、前年度および本年度に行った判例分析を踏まえて、フランスで入手してきた文献の読解を進めたい。できれば研究の成果を論文として大学紀要等で公表したい。
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Research Products
(3 results)