2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K03347
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
斎藤 誠 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (00186959)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 国際標準 / 占領法 / 転換法 |
Outline of Annual Research Achievements |
今期は、(1)国際民間航空機関の国際標準に関する、ドイツ、イギリス、アメリカの法制度、判例及び文献収集を行い、その内在的分析と日本の状況との比較分析を進めた。 あわせて、(1)及び今後の「国際的な基準」の国内的位置づけの一般理論構築の、ベースになる考察として、(2)国際的な規範の国内法への「転換」につき、ドイツにおいて、EU法の転換現象の先駆的現象として、第二次大戦後の占領法の国内法への転換という現象が生じていたことに着目して、その分析と、日本法制におけるGHQ指令の国内法的効力との比較を行った。 すなわち、まず、EU指令の転換に関する従来の日本の議論動向を整理した上で、転換行為と他の国内化措置・概念(編入、変型、実施、保障)との差異につき明確化を図った。 そして、第二次大戦後のドイツにおける占領法の類型(直接占領法・間接占領法)のうち、間接占領法、とくに指示間接法が、転換法として捉えることができ、国内裁判所の審査が限定される点を中心に、現在における国際規範の転換、ひいては、一つの領域に二つの法が妥当するという現象に示唆することの多い現象であることをドイツの文献を参照して分析した。日本のGHQ指令についても、日本の判例が、「憲法外におけて法的効力を有する」と認めた点に、二つの法秩序の併存という観点を見出すことができることを確認した。 (3)従来の国際基準論から視野を広げるべく、日本の公衆衛生分野における、新旧グローバル化への対応という面をもった法制度の推移に考察を加えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国際民間航空機関の国際標準に関する比較法的考察につき、判例等の集積に不十分な点はあるものの、分析を進展させることができた。 国際基準の転換に関する先例的価値を持った、占領法規の転換という現象につき、分析を加え、その一部を公表することができた。 本研究課題の各論的比較対象の範囲を拡げるべく、公衆衛生分野における、戦間期グローバル化、及び現代のグローバル化への対応という面を持った、日本の法制の推移につき考察し、その一部を公表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)国際経済法及び国際環境法分野での、国際的な基準を扱った外国国内裁判所判例につき、ドイツ、イギリス、アメリカ合衆国を対象に収集・分析を行う。 (2)ドイツないしイギリスを対象に、上記(1)及び占領法の転換に関するヒアリング、及び日本で入手困難な資料収集を行う。 (3)日本の国内裁判においても利用可能な、国際的な基準の取り扱いに関する理論モデルの素案の提示に向けた考察を進める。
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Causes of Carryover |
今年度の研究において、間接占領法の国際法転換法としての位置づけという、新たな研究の視点を得たため、その考察、及び公衆衛生分野における国際化・グローバル化への対応という新規分野の研究を平行して行ったため、国際民間航空機関関係のヒアリング実施及び追加的文献収集を次年度に先送ることを余儀なくされたが、他の経済行政法及び国際環境法分野における研究を対象にした翌年度請求分と併せて使用することが十分に可能である。
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