2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K03353
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
小西 敦 静岡県立大学, 経営情報学部, 教授 (10431884)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 地方自治法 / 市 / 町村 / 権限移譲 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「市の要件と効果」を明らかにすることである。本年度は、この目的のうち、主として、「効果」についてを中心に、すなわち、市制が施行されることは、町村の時とどのような「違い」が生じるかについて、調査・研究を行った。本年度の研究で明らかになった主な点は、下記のようなものである。 1 市と町村とで組織上の一番大きな違いは、福祉事務所が必置か否かであること。ただし、町村でも設置することは可能であり、現に、2017年4月1日現在、43の町村が福祉事務所を設置していること。この結果、福祉事務所が担う事務の有無が、市と町との事務・権限上の違いとなっていること。しかし、この違いも、町村が福祉事務所を設置すれば、解消されるものであること。 2 2011年の第2次地方分権一括法によって、市への権限移譲が進んだことで、市と町の事務・権限上の違いは、増えていること。違いが生まれた事務・権限は、分野別でみると、消費者保護、環境、産業振興、都市計画等に関するものが多いこと。上記の事務・権限以外で、法律上、市になったことで増加する事務・権限として、①児童扶養手当の支給・認定等、②母子・父子自立支援員の委嘱及び母子家庭自立支援給付金の支給等、③商店街振興組合及び同連合会の設立認可・指導監督、④文化財保護関係の史跡名勝天然記念物の現状変更等の許可等があること。さらに、そのほかに、公職選挙法上の違いとして、市と町村の間に、供託金、選挙公営の範囲及びビラ頒布等に関して、違いがあること。ただし、供託金が町村長選挙の場合には必要だが、町村議会議員選挙では不要(市議会議員選挙では必要)など、市と町村間の単純な違いといえない部分もあること。 3 財政上は、マクロ的には、人口10万人未満の小都市と人口1万人以上の大町村を比較すると、住民一人当たりの歳出・歳入額はほぼ同じであり、大差はないこと。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
市の効果、すなわち、市と町村の違いについて、実定法上の違いをある程度網羅的に整理し、論文にまとめ、公表することができた。 一方で、本年度後半に予定していた国内外の市町村等の訪問調査を実施できず、前年度にまとめた市の要件の違いと本年度にまとめた市の効果の違いを合わせた、市と町村の全体としての違いについての研究をまとめることができなかった。 以上のことから、「やや遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度に未実行であった国内外の市町村等の調査を行い、その調査結果も含め、これまでの研究成果をもう一度整理し直し、2020年度中に、市の要件と効果の違いの全体を論文としてまとめ、研究成果を公表したいと考えている。 あわせて、研究成果を、大学及び大学院教育、自治体職員向けの研修会等で活用し、社会に還元していきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
2019年度後半に予定していた国内外の市町村等の訪問調査等が実施できず、その分の旅費や調査結果を整理するための人件費等が未執行に終わった。 現在のコロナウイルス感染症の蔓延状況がどこまで収束しているかなどにもよるが、この訪問調査等を2020年度には行っていきたいと考えている。
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