2017 Fiscal Year Research-status Report
立法及び裁判手続における立法事実の活用に関する研究
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17K03354
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
土井 真一 京都大学, 法学研究科, 教授 (70243003)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岸野 薫 香川大学, 法学部, 准教授 (70432408)
奥村 公輔 駒澤大学, 法学部, 准教授 (40551495)
御幸 聖樹 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 准教授 (20634009)
山田 哲史 岡山大学, 社会文化科学研究科, 准教授 (50634010)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 立法事実の活用 / 立法事実の変遷論 / 影響評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の計画では、初期に全体会合を行い、基礎知識・問題意識の共有が予定されていた。これに従い、8月の全体会合で、奥村がフランスにおける議論状況に関する報告を行うとともに、立法府、裁判所のいずれの場面における立法事実論から着手すべきかなどについて議論し、基本的な視座を共有した。 これを踏まえて、奥村・山田の2名は、9月にドイツ・フランスを歴訪した。まず、ドイツでは、資料収集、現地研究者との意見交換を実施した。フランスでは、資料収集のほか、憲法院、国民議会を訪ね、現役判事や上級の事務職員から、聞き取り調査も行った。両名はこれを踏まえて、研究の方向性を一層具体化し、奥村は、「影響評価制度」と「立法事実の変化を理由とする違憲判決」というテーマについて研究を進めており、山田は、民主政論との関係から、憲法裁判における立法事実検出のあり様にアプローチしている。 他方、米英については、それぞれ御幸、岸野が日本国内における資料の収集と、研究の方向性の確定に努めた。この成果として、岸野は、最高裁に提出されるアミカスの最近の特徴(アミカスの執筆者及び調整者としてのエリート法律家の存在とその功罪)を描出した論稿について紹介した。御幸は、イギリスの上院憲法委員会やアミカスの調査を行い、両者についての沿革等の調査を完了させた。 土井は、以上の研究全体を統括するとともに、日本における、近時の「立法事実の変遷論」をめぐる、判例・学説の整理を行った。なお、日本については、御幸、山田も、教材という形ながら、従来の研究成果を公表している。 最後に、今年度の研究を締めくくるに当たって、参議院法制局の川﨑政司氏を招き、「『立法事実』の拡散とその意義・射程・限界」という題目で、外部公開の研究会を実施し、実務的観点を取り込むとともに、改めて、関係者間の意思疎通、情報共有を図った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要でも述べたように、全体としては、土井の統括のもと、研究課題、基本的視座を確実に共有しつつ、各研究者がそれぞれ、具体的な研究対象を確定し、その究明、さらには公表を見据えて着実に研究を進めている。 繰り返しを厭わず、もう少し具体的に進捗状況を述べると、まず、29年度、外国における調査を実施した、奥村・山田については、予定していた基礎的文献調査及びインタビュー調査の実施により、フランス・ドイツにおける立法事実の活用に関して概括的に把握でき、本格的な検討の段階に進んでいる。その成果は、来年度中には、論稿として形になる予定である。また、現地調査を実施しなかった、米・英についても、米国についていえば、現地での最新研究の紹介・検討を書評として形にし、イギリスについては、基礎的な調査を完了するなど、成果をあげている。このような順調な研究の進展によって、30年度の現地調査における要点・勘所は明確なものとなっており、調査は有意義なものとなることが予想される。我が国についての研究に関しても、土井を中心に着実に進展しており、これも前述した通り、学生用教材という形ではあるが、成果もあげられている。 以上のように、着実な進展を見せているところである。しかし、惜しむらくは、29年度にあって、本格的な学術的業績をあげるにはいたっておらず、30年度以降にこれをあげられるよう、決意を示すとともに、自戒の念も込めて、「概ね順調である」という自己評価を与える次第である。
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Strategy for Future Research Activity |
30年度も、土井による統括のもと、問題意識や問題に対する視座を研究者間で共有しながら、それでいて、各研究者の独自性を活かして研究を進めていく予定である。 意識や視座の共有を図るため、年度内に2回の全体研究会を開催する予定である。具体的には、まず、7月あるいは8月に、外国調査を踏まえて、特に研究が進んでいる奥村、日本の議論状況について検討を深めた土井、場合によっては、これに加えて、奥村同様外国調査を終えている山田による、研究成果報告の場を設ける予定である。また、年度末、すなわち、31年2月あるいは3月には、外部の実務経験者をゲストスピーカーとする研究会を実施することが想定される。2年目の締めくくりの時期に開催されるものであるので、この研究会は、ゲストスピーカーの報告を受け身で聞くだけではなく、研究代表者・分担者の方からの有意義な応答と、議論の深化ができるようなものとなることが予定される。さらに、外部、社会への研究成果の還元を図るため、当該研究会は基本的に公開研究会とする予定である。 個別の研究計画は、以下の通りである。まず、29年度に、外国調査を終えた奥村・山田は、研究会での報告を踏まえつつ、奥村は二本、山田は一本程度の論文の公表を目標とする。次に、岸野、御幸はこれまでも述べたように、30年度に、アメリカ、イギリスにおける現地調査を実施する。この現地調査において、両名はともに、アミカス(英米両国)や上院憲法委員会(英国)の現代的機能に特に焦点を当てる予定である。最後に、土井は、日本における立法事実の変遷論をめぐる、判例・学説の整理を進め、研究会における報告を踏まえて、論稿にまとめることを目標とする。
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Causes of Carryover |
(理由)30年度使用額として、2000円程度が生じた。これは、誤差の範囲内ともいえる金額であるが、購入したい書籍の金額に若干及ばなかったというのが理由である。 (使用計画)早急に購入すべき消耗品の購入や、書籍の購入に使用する計画である。なお、30年度は、誤差程度とはいえ、次年度使用額が生じないように気をつけることはいうまでもない。
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Research Products
(12 results)
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[Book] 精読憲法判例2018
Author(s)
木下昌彦編集代表(御幸聖樹・山田哲史ほか編著)
Total Pages
669
Publisher
弘文堂
ISBN
9784335357251
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[Book] 憲法判例の射程2017
Author(s)
横大道聡編(御幸聖樹・山田哲史ほか著)
Total Pages
301
Publisher
弘文堂
ISBN
9784335367060
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[Book] 憲法事例演習2017
Author(s)
大沢秀介・大林啓吾編(御幸聖樹ほか著)
Total Pages
486
Publisher
成文堂
ISBN
9784792306151
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