2017 Fiscal Year Research-status Report
立憲民主制における議会機能再生の制度構想-日・英・豪の比較議会法研究
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17K03356
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
木下 和朗 岡山大学, 法務研究科, 教授 (80284727)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 議会 / 裁判所 / 司法府 / イギリス憲法 / 貴族院 / 立法 / 説明責任 / 憲法 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、イギリスを主な比較対象として、議会の立法及び政府統制に憲法上の妥当性及び規範適合性の審査機能を組み込むこと、並びに、議会過程において議会と司法府が協働することに関わる制度実践を実証的に解明すること、及び、これらの制度実践の歴史的文脈と理論的基礎を検討することを中心に研究を実施した。 第一に、貴族院憲法委員会などの議院の委員会審議に裁判官が出席し質疑に応ずるという近年の制度実践を実証的に分析し、議会に対する司法府の説明責任の確保、及び、立法における議院(議員)と司法府(裁判官)の協働という観点から、その歴史的文脈と憲法上の意義を考察する論稿を執筆した。当該論稿は早期に公表する予定である。 第二に、実質的意味の憲法に相当する議会制定法の審議手続に係る習律などを素材にして、立法及び政府統制において憲法上の妥当性及び規範適合性を確保するための議会制度の在り方、並びに、議会過程における議会と司法府との協働に関する学説を検討した。当該研究の成果は論稿にまとめて、次年度の公表を期したい。また、第一で述べた論稿の知見と過年度の研究実績を踏まえて、本研究の観点から、イギリスの憲法秩序構造の特質を分析し、政治性の強い立法過程において、第二院である貴族院の憲法保障機能を果たすこと、及び、議会と裁判所が協働することの意義を検討する研究報告を行った。 第三に、差別立法や裁判の差別的運用が要因となり、死刑に処せられた者の名誉回復をめぐる憲法問題を検討する論稿を執筆した。当該論稿は、裁判過程による当該人の名誉回復に一定の限界があり、議会が名誉回復に関与すべきである旨を指摘しており、本研究の問題意識と通底する関連業績である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度における主要な研究計画は、[1]議会の立法及び政府統制に憲法上の妥当性及び規範適合性の審査機能を組み込むこと、並びに、議会過程において議会と司法府が協働することに関わる制度実践を実証的に解明する、[2]これらの制度実践の歴史的文脈と理論的基礎を検討するという本研究の目的について、イギリスを主な比較対象として研究を実施することである。何れの目的についても、論稿を執筆し、研究報告を実施して、研究者との意見交換を行うことができたことから、おおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
次度以降も、研究実施計画に照らし継続的に研究を実施し、論稿の公表、研究調査旅行など区切りとなるイベントを設定して、本研究を計画的に推進することを動機付ける。 特に次年度は、次の3点を中心に研究を実施する計画である。第一に、今年度準備を進めてきた、オーストラリアを対象とする比較研究を本格的に実施する。議会文書やインターネット上で公開されている公式情報などの第一次資料も活用し、議院規則及び慣行を含めた議会実践を実証的に分析するとともに、学説における議論を検討する。併せて、オーストラリアへ調査研究旅行を実施する。第二に、イギリス及びオーストラリアにおける議会実践及び学説に関して得られた研究実績の公表を図る。また、これらの比較研究の成果を検討して、両国の異同と共通性を解明する。第三に、国内の調査研究旅行を実施し、文献資料の調査及び収集を行うともに、国会実務に関する専門知識の提供を受け、日本における制度化に伴う実務的課題の観点から本研究の内容について意見交換を行う。
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Causes of Carryover |
(理由)イギリス公法学及び議会研究に係る文献資料について既存の資源を活用できたことが主な理由である。 (使用計画)今年度末にかけて研究の進展にともない、研究の実施に不可欠な文献及び資料を新たに補充する必要が生じているとともに、次年度においてはオーストラリアを対象とする比較研究が本格化することから、当初計画を上回る研究経費を要する見込みであり、次年度使用額も含めて執行する予定である。
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