2018 Fiscal Year Research-status Report
立憲民主制における議会機能再生の制度構想-日・英・豪の比較議会法研究
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17K03356
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
木下 和朗 岡山大学, 法務研究科, 教授 (80284727)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 議会 / 裁判所 / イギリス憲法 / オーストラリア連邦議会 / 貴族院 / 立法 / 説明責任 / 憲法 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、比較対象をイギリス及びオーストラリアに拡大して、議会の立法及び政府統制において憲法上の妥当性及び規範適合性を確保するための制度基盤、及び、議会過程における議会と司法府の協働に関わる制度実践を実証的に解明することを中心に研究を実施した。 第一に、昨年度言及した、イギリス議会における議院特別委員会審議に裁判官が出席し質疑に応ずるという近年の制度実践を実証的に分析し、その歴史的文脈と憲法上の意義を考察する論稿は、ある論文集に所収するため、出版社に入稿し、公表待ちである。 第二に、議院が合理性のある決定に至ることを実効的に確保するという観点を含めて、イギリス議会制度における時間の利用をめぐる制度と運用を考察する論稿を執筆した。当該論稿は次年度中の公表が決定している。当該論稿に関連して、フランス国立東洋言語文化研究所において日本の国会における議事手続と時間に関する研究報告を実施した。 第三に、オーストラリア連邦議会との比較研究については、資料を収集し、議会実践を実証的に分析するとともに、学説における議論を検討した。また、Public Law Conferenceに参加して、英・豪両国における最新の研究動向を摂取し、本研究と同様の問題関心を有するオーストラリアの憲法研究者との関係構築に努め、次年度以降の訪問調査の足がかりを得た。 第四に、昨年度から実施しているイギリスにおける学説の検討を継続した。論稿の早期公表を期したい。なお、イギリスにおける議論に着想を得て、議会上院に憲法保障機能を認めるための制度構想論を展開する準備の一環として、日本の参議院の制度構想における歴史的文脈を考察する論稿を執筆した。当該論稿は本研究の問題意識と通底する関連業績である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度における主要な研究計画は、[1]議会の立法及び政府統制に憲法上の妥当性及び規範適合性の審査機能を組み込むこと、並びに、議会過程において議会と司法府が協働することに関わる制度実践を実証的に解明する、[2]これらの制度実践の歴史的文脈と理論的基礎を検討するという本研究の目的について、比較対象をイギリス及びオーストラリアに拡大して、かつ、両国の異同を解明するための研究を実施することである。何れの目的についても、論稿を執筆し、研究報告を実施し、オーストラリアの憲法研究者をはじめ研究者との意見交換や関係構築をできたことから、おおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
次度以降も、研究実施計画に照らし継続的に研究を実施し、論稿の公表、研究調査旅行など区切りとなるイベントを設定して、本研究を計画的に推進することを動機付ける。 特に次年度は、第一に、この2年間実施してきた英・豪両国の制度基盤及び実践の実証分析に関する比較研究のとりまとめ、及び、学説の検討を通じて得られた知見の公表に向けた研究を実施する。この一環として、イギリス及びオーストラリアへの調査研究旅行を実施する。第二に、比較研究の成果を踏まえて、司法制度論、代表民主政論、立法哲学等の文献資料を学際的に検討して、規範的合理性を確保し、司法府と協働することを通じて議会の機能を活性化するための制度基盤と機能条件を理論的に解明する。第三に、国内の調査研究旅行を実施し、文献資料の調査及び収集を行うともに、国会実務に関する専門知識の提供を受け、日本における制度化に伴う実務的課題の観点から本研究の内容について意見交換を行う。
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Causes of Carryover |
(理由) [1]オーストラリアへの調査研究旅行について、意見交換や人的ネットワーク構築のためのPublic Law Conference参加と議会等への訪問調査を同時に実施するよりも、2回に分けて実施した方が旅費を節約できることが判明し、今年度は2回のうち1回を実施したこと、[2]東京への調査研究旅行について、国会実務に関する専門的知識の提供を受け、意見交換を行うという目的に鑑みて、次年度に実施した方が有意義であると判断したことが主な理由である。なお、国会実務家との意見交換自体は今年度実施している。 (使用計画) 理由において言及した調査研究旅行は何れも次年度以降適切な時期に実施し、次年度使用額も含めて執行する予定である。
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