2018 Fiscal Year Research-status Report
日本憲法研究の国際比較-グローバル立憲主義の形成における日本憲法の寄与可能性
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17K03357
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
新井 誠 広島大学, 法務研究科, 教授 (20336415)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 順太 白鴎大学, 法学部, 教授 (20382690)
小谷 順子 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (40359972)
横大道 聡 慶應義塾大学, 法務研究科(三田), 教授 (40452924)
徳永 貴志 和光大学, 経済経営学部, 准教授 (50546992)
木下 和朗 岡山大学, 法務研究科, 教授 (80284727)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 憲法 / 比較憲法 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、平成29年度に整えた基盤的研究体制のもとで、本課題に参加する研究者が各自の研究を実施した。その過程で、日本憲法研究の国際的寄与に関わる研究報告を国内外の学会、研究会等で実施できたものもあった。また、アイルランドの研究者をゲストスピーカーに迎えた本研究課題に関連する研究会を開催したり、エストニアの研究者による本研究課題に関連する講演会に研究メンバーが参加したりした。この他、日本の法・政治に関心を持つフランス人研究者との学術交流を図った。さらに、外国(仏)の大学の東洋の資料を収集する図書館において調査・職員面談の機会等を設け、日本憲法研究の資料・情報の収集方法等に関する理解を深めることができた。こうした活動を通じて、日本の法制度及び学説等について諸外国(の研究者等)が寄せる関心部分や、各国の憲法学の現状から見た外国憲法(学)への関心の持ち方の国ごとの違いといった、本研究を深化するうえでの重要事項を確認できたことが一つの成果である。 また、グローバル化の中の比較憲法の課題につき検討する講演会(研究分担者1人の所属大学の研究所主催)では、代表者と分担者全員が、パネルディスカッション方式でのコメンテータとなり、各自コメントを述べ、講演者との対話を行った。同講演及び対話では、現代における国際的レベルでの憲法学の多様性が確認され、西洋に見られる「普遍」と日本の「特殊」といった二元論の限界等に関わる議論がされた。それは、フラット化された中での比較憲法や日本憲法研究の国際比較等の意義の再確認にも関わる内容となった。 以上の研究を通じて、日本憲法学への期待や印象、それに対する期待などについて研究代表者・分担者一同の間の相互理解がさらに深まったといえる。なお、こうしたことを踏まえた関連研究成果の一部につき、いくつかの具体的な成果公表にたどり着けたものもあったことを付記したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度に実施されるべき研究に関する計画では、各代表者・分担者がそれぞれの研究を進めつつ、諸外国における現地調査や、外国人研究者に対するヒアリング、ゲストスピーカーによる研究会の実施などを主に進めることが予定されていた。以上を受けて平成30年度には、研究報告の実施や面談等の手法を通じて、日本憲法研究への関心、国際状況の中での(日本を含む)諸外国の憲法研究の意義などについて、何人かの外国の憲法研究者等から、情報提供を受けることができた。また、グローバル化の中における日本憲法研究の意義にも関心を寄せる研究者の講演において、本研究課題の研究代表者・分担者全員がコメントを行ったことを通じて、日本憲法研究自体の現代の問題点や外国への発信の意義に関して、メンバー一同の認識を深めることができた。以上の研究実践を見る限り、当初の計画については、適宜、履行できたと考えられる。さらに、各自の研究の進捗状況を見ると、一定の研究報告や成果公表を行うことができたものもあり、進展が見られた。 他方で、現地調査やアジアの研究者等へのヒアリングを若干強化することが求められたかもしれない。また、外国人研究者との交流をさらに強化し、より積極的、専門的な視点から、本研究課題に関する対話を行うことも求められたようにも感じている。そしてより具体的な日本憲法学への関心や問題点などの提起を受けたりすることがあるとよかったように思われる。もっとも以上の点は、次年度も実施できると考えている。 以上のことから、現在までの進捗状況については、「おおむね順調に進展している」を選ぶこととなった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度(令和元年度)もまた、当初の交付申請書に示した研究実施計画に照らし、継続的に研究を進めていくことになる。特に、過年度の調査を踏まえて、諸外国における日本憲法研究の状況とそれらの各国比較をしつつ、グローバル化時代における日本憲法研究の国際的寄与可能性をめぐって一定の総括的結論を出せるよう努めたい。特に平成31年度(令和元年度)は、研究の最終年度であることから、従来のものに加えて、さらなる研究成果の公表に努めていきたい。 また、前年度からの課題として外国人研究者との交流の強化を通じた研究の深化がその一つに挙げられることからも、たとえば日本の法・政治を研究対象としている海外の研究者を招聘するなどとして、日本憲法研究の国際比較や外国憲法学に対する寄与可能性の追求に関する研究を強化したい。とりわけグローバルな立憲主義の形成に向けて日本憲法(学)が寄与すべき点などについて具体的な意見交流を積極的に行うことも考えている。こうしたことに関して最終的な研究成果の公表に反映させたいと考えている(もっともそうした招聘が難しくなった場合等には、適宜、海外に出向くか、国内にいる研究者などへの調査を通じて、積極的な交流を別の形で実施していくことが考えられるであろう)。
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Causes of Carryover |
旅費や物品の購入をめぐっては、航空券などの代金等や品物の額について概算で見積もっていたものの、各人が一定の合理的な節約などをすることにより、当初額よりも若干安くなった部分もあった。また、特に海外への渡航(あるいは必要に応じて、海外からの研究者の招聘による専門知識の提供に伴う先方からの渡航)について、研究代表者・分担者(あるいは面談あるいは招聘を予定する研究者等)に関する日程調整やその他の事情により、平成30年度には実施できなった部分も一部見られたことから、使用予定額との金額の差異が生じたと考えられる。 平成31年(令和元年)度においてもまた、引き続き、物品費や研究調査・専門知識の提供等に伴う関係者の交通費などを計上しているが、こうした額が不足する可能性もあることから、平成30年度からの繰越分と合算し、一定の節約も意識しながら、合理的に使用していくこととする。
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Remarks |
[講演会におけるコメンテータとしての参加]山元一「グローバル立憲主義と比較憲法学の展望―「市民社会」志向の憲法学は可能か?」に対する(パネルディスカッション方式の)コメンテータとして、新井誠・小谷順子・木下和朗・徳永貴志・横大道聡・岡田順太が参加した(白鴎大学法政策研究所、2018年12月22日実施)。
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Research Products
(12 results)