2018 Fiscal Year Research-status Report
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17K03359
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
原島 良成 熊本大学, 熊本創生推進機構, 准教授 (90433680)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 救済遅延 / 慰藉料 / 公健法 / 災害救助法 |
Outline of Annual Research Achievements |
原島良成「熊本水俣病認定不作為事件―申請処理の遅延と慰藉料請求」大塚直=北村喜宣編『環境法判例百選[第3版]』(有斐閣、2018年)180-181頁では、行政法規としての公害救済法制が機能不全に陥った基本判例(最2小判平成3・4・26民集45巻4号653頁)について、先行研究を広範囲に調査した上で、議論状況を整理した。この作業は、公害救済における「時間経過」の問題を、改めて被害実態に即して認識する上で有益であった。 行政的救済の法制度としての在り方は、救済法理ととともに行政組織法理によっても規定される。被害を行政が認定して補償する、という公害救済に典型的な方式ではないものの、即時即応の被害対応を目指す法政策として、災害救助法がいかなる救済法理に基盤を持ち、行政組織法理といかに折り合いをつけて目的達成の仕組みを導入しているかは、公害救済における政府の役割と法制度の在り方を考える上で、参考になると思われた。出版が遅れているが、2018年11月に脱稿し2019年3月に校了した、原島良成「災害救助の分権論」西埜章先生・中川義朗先生・海老澤俊郎先生喜寿記念『行政手続・行政救済法の展開』(信山社、2019年5月出版予定)では、この問題意識から検討を行った。関連して、国・都道府県・市町村の間の役割分担を論ずる「補完性原理」論について調査し、日本公法学会第2部会(2018年10月・専修大学)においてコメントを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画で予定していた公健法の立法史調査が後回しになっている。しかし、実定法制度そのものの分析に先立つ本年度の作業により、公害救済の実態を整理し「救済のタイミング」という制度分析の観点を描写できたわけで、必要な回り道であった。また、本研究は公健法自体を研究するものではなく、公健法をも素材の一つとして公害被害救済の法理論を探究するものであるため、政府による被害救済という共通性を持つ法制度の分析を行うことは、最終的に公害救済法制のモデル化を目論む上で、公健法の立法史調査よりも優先される。 つまり、当初計画からの軌道修正はあるものの、全体として本研究の到達点に向けた研究は概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
後回しとなっている公健法の立法史調査の優先順位を下げ、公害救済法制のモデル化に当たって参考になると考えられる、被爆者援護法による原爆症認定について、事例分析の形で調査を行う。並行して、当初計画(本年度分)にある、行政による被害事実認定の理論的検討を進める。いずれも年度内の成果脱稿を目指す。
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Causes of Carryover |
前年度記載した理由で資料の収集と整理のための人件費は執行せず、代わりに自身で旅費を執行して調査出張を行い、物品費で購入したPC等を用いて資料整理を行った。2万円弱の残額が生じたのは、出張経費とPC購入でそれぞれ幾分安く済んだためと考えられる。次年度の福岡出張ないし資料整理用の物品購入に使用する計画である。
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Research Products
(2 results)