2020 Fiscal Year Research-status Report
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17K03359
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
原島 良成 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部, 准教授 (90433680)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 公有水面埋立 / 地方分権 / 原賠法 / 責任集中 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の基底には「裁判所による救済」の意義(限界)を問う公法学の問題関心がある。代替的方策として政府行政過程による審査・裁定手続の利用が考えられ、司法的救済の概念から自由な制度設計も理論上可能であるが、半面で、どの行政主体が裁定するかにつき政治的考慮が働くので、そこを環境法上の分権論により統制しなければならない。原島良成「公有水面埋立承認を受ける国の地位」新・判例解説Watch27号(2020年)267-270頁では、上述の観点から辺野古埋立に関する機関訴訟の最高裁判決を分析した。本研究の派生的成果と位置付けられる。 中核的成果としては、やはりケーススタディではあるが、原島良成「福島第一原発事故群馬訴訟(特に国家賠償について)―前橋地判平成二九年三月一七日判時二三三九号四頁」環境法研究45号(2020年)133-142頁で、原賠法による責任集中規定の機能に触れた。同法は本研究が当初より目的としている、あるべき公健法制度設計を論じる上で比較参照されるべき制度である。 これまでの研究を踏まえて新たに意識されてきたのが、現代的な環境法政策の基本原則とも整合するように旧来型の公害被害救済を制度設計できるかという点である。単に当事者間の問題として処理するのではなく、公共的課題として処理するための議論が「環境ガバナンス」論として組み上げられているが、環境法理論との対話が十分か疑問があった。そこで、原島良成「書評論文:千葉知世著『日本の地下水政策』(2019)」自治総研507号(2021年)33-54頁において、手探りながら政策学の成果を取り上げて問題提起した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度までの研究を進める中で、被爆者援護法の適用事例分析に着手し、引き続き石綿被害救済と原子力被害救済へと進む予定であったが、COVID-19による移動制限とそれに伴う情報収集の困難、大学業務の増大を受け、まとまった研究時間が取れず、細切れの作業を行うことになった。 成果としては、一応原子力被害救済法制に踏み込んだ点で2020年度としての進捗を示せたと考えており、また、今後の研究成果の応用に繋がる派生的な成果(辺野古機関訴訟を環境争訟として位置づける分析)や、隣接学問分野(環境政策学)との対話にも手を付けたが、最終的な本研究の幹となる論文の完成には至っていない。最終年度を1年間延長してこれに取組むこととした。
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Strategy for Future Research Activity |
COVID-19が収束せずなお研究推進上の支障は残るが、2020年度に予定していた、被爆者援護、石綿被害救済、原発事故救済の分析を踏まえた公害救済制度の設計論議を、論文の形にする。当初研究計画では想定していなかった、辺野古問題の争訟過程や地下水法政策にかかるガバナンス論議の検討で得た知見も盛り込み、時間的に遅れた分充実した成果の公表に繋げたい。
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Causes of Carryover |
COVID-19で出張計画が一部中止となり、研究計画を変更した影響で残額が生じた。2021年度も出張困難な状況が続いている。引き続き出張可能性を探りつつ、古書も含め書籍等を購入し、また遠隔調査のための通信機器やデータベースの購入も検討する。
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Research Products
(3 results)