2019 Fiscal Year Research-status Report
持続型・縮退型社会における都市行政の費用負担のあり方に関する研究
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17K03361
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
田尾 亮介 首都大学東京, 法学政治学研究科, 准教授 (50581013)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 財政調整 / 地方債 / 地方公共団体の内部統制 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は本研究課題の3年度目にあたるところ、公表された研究業績としては研究発表欄記載の雑誌論文2件がある。 人口減少社会においては、自治体の広域連携や広域化の取組みが必要となる一方、既存の基礎的自治体よりも狭小の地域を単位として、地域に共通する利益を実現するための法的枠組みの構築も重要な課題として存在する。限られた行政資源を所与とするなら、公的資金(租税)のみによる公共空間の形成だけではなく、民間資金(例えば、地方自治法上の分担金・負担金や金融的手法など)をも活用した資金調達手段の多様化は指向されてよい。斯様な問題意識に基づき、前年度の学会報告の内容をもとに租税と負担金の関係について考察を深めた研究成果が雑誌論文1件目である。 他方で、地方公共団体とは何かという基本問題にも応接せざるを得なくなった。日本の地方公共団体を時間的・空間的拡がりの中で把握すると、①国の監督・後見に服する団体(国の関与によりデフォルトを防ぐ仕組みとなっていることを含む)、②憲法上保障された課税権を行使する統治団体、③私企業と同じ行動原理で活動する団体という諸相が浮かび上がる。これを、財政調整制度(地方交付税交付金・国庫補助負担金)、地方債発行にかかる協議制度、平成29年地方自治法改正により導入された内部統制制度・地方公共団体の長らの損害賠償責任一部免責制度というアクチュアルなテーマと結びつけて論じた研究成果が雑誌論文2件目である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度も遅々とした歩みではあるが、中間的な成果物に相当する研究業績を発表することができた。次年度も本研究課題に関連する論稿の執筆を予定しており、現在はそれに向けた準備を進めている。これらの状況を勘案すると、本研究課題はおおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は、公法学において久しく議論の外に置かれてきた受益者負担金に着目することにより、日本法において租税以外の(強制的に賦課される)負担金に関する理論的かつ実証的研究を深化させることを目的としている。しかし、いわゆる「負担金国家(料金国家)」は、予算を通じた議会による政府コントロールや公共的負担に関する市民の平等と緊張関係にある。逆説的な帰結であるが、負担金の限界と(租税収入中心主義という意味における)「租税国家」の意義を明確に論証することができれば、本研究課題は、より奥行きのある深遠なテーマへと連なる可能性を有している。
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Causes of Carryover |
本年度は、図書を幅広く取り揃えたが、その一部は所属研究機関の研究費により購入できたため、未使用額が生じた。本年度に生じた未使用額の大部分は次年度の文献調査に充当される予定であるが、状況が許せば外国への出張のための費用にも割り当てることとする。
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