2021 Fiscal Year Annual Research Report
A study of the cost-sharing of urban administration in a sustainable and shrinking society
Project/Area Number |
17K03361
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
田尾 亮介 東京都立大学, 法学政治学研究科, 准教授 (50581013)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 容積率の規制緩和 / 公共貢献 / 隔地貢献 / 衡量原則 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究実績は以下の通りである。 雑誌論文1件目は民間企業と大学の共同研究会の議論に触発されて執筆したものである。東京などの大都市では2000年以降、大規模な高層建築物が林立しているが、これは容積率に関する様々な特例的規制緩和を利用したものである。デベロッパー等の事業者はその対価として公開空地や住宅の附置義務を負うが、近年では、防災施設、河川上流域の森林涵養、低炭素化事業など広範な分野で協力が求められるようになっている。このような取引は、事業者にとって有用であることはもとより、行政にとっても公金の支出を伴うことなく都市基盤施設の整備を行うことができる点で有用であるが、「行政は特定の私人との取引に基づいて活動するのではなく、社会の諸利益を衡量しながら公共善を実現する」という原則からは逸れている。本稿は、現行法上の様々な緩和制度を整理して行政法学の観点から問題となりうる論点を提示し、このような仕組みの可能性と限界を問うたものである。 雑誌論文2件目、3件目、学会発表1件目は、継続研究課題であるBID制度に関するものである。雑誌論文2件目ではドイツ各州のBID制度を概観し、事業実施者(Aufgabentrager)の民主的正統性、BID公課(BID Abgabe)の位置づけ、EU法との関係(特にBeihilfenrechtおよびVergaberecht)を論じた。このテーマについては優れた既往研究があるところ、自ら資料を探索することで新たに獲得できた知見も少なくない。雑誌論文3件目は日本版BID制度に関する研究である。大阪市の制度と国の制度を概観し考察を加えた。残る課題(例えば、強制加入制の正当化根拠等)については引き続き研究を続ける予定である。学会発表1件目はアメリカ各州、イギリス、ドイツ各州、日本のBID制度を紹介したものであり、出席者から貴重なご指摘を賜ることができた。
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