2017 Fiscal Year Research-status Report
空中権取引の課税理論と空中権取引を利用した租税回避防止策の研究
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17K03365
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Research Institution | Takushoku University |
Principal Investigator |
阿部 雪子 拓殖大学, 商学部, 教授 (50299814)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 空中権 / 準拠法 / ステークホルダー / 信託受益権 / 信託財産 / 強制執行 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、国際課税の側面から空中権取引の当事者であるステークホルダーに着目し、検討を行った。国外の事業体を通じて空中権取引を行った場合の課税関係を検討するにあたり、その事業体の経済活動を規律する準拠法をどのような判断基準に基づいて認定するのかが重要となる。この点について、事業体であるLPSが我が国の法人として納税義務者に当たるかどうかが問われた最判平成27年7月17日(民集69巻5号12あ53頁)では、我が国の法人としての属性である権利義務の主体となり得るかどうかがその判断基準であることを明示した。 次に、信託を通じて空中権取引を行った場合の準拠法の適用問題について考察した。我が国の租税法では、信託の受益者は、信託財産に属する資産及び負債を有するものとみなされ、かつ、その収益及び費用も帰属するものとみなされる。その意味で、信託財産と信託受益権は重要な要素となる。 信託における準拠法を決定する場合、原則として、信託における信託関係人の予測可能性を確保することが重要である。信託の基本的構造の観点からは、信託の債権法的側面と物権法的側面の双方を考慮する必要がある。そこで、空中権を信託財産と仮定した場合、信託財産の準拠法はどのように認定されるべきかについて考察した。信託の受益権に係る準拠法をどのように決定するのかに関し、1943年のアメリカ合衆国のW・Jones Trust事件判決を手掛かりに考察し、信託の受託者の事業所及び信託財産の所在地の要素が重要な意味を有することを明らかにした。その上で、空中権を信託財産とした場合も、この取扱いが参照されるべきことを指摘した。さらに、国内において空中権が信託財産とされた場合、受託者の租税債権者が空中権に対して強制執行することが可能かどうかにつき、最判平成28年3月29日(判時2310号39頁)を素材に検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、国税庁税務大学校税務研究会、国際取引法学会金融税制部会及び関西大学租税法研究会並びに法務省租税判例研究会等において報告することを通じて、租税法研究者、財務省等(国税庁、税務大学校等の税務執行機関)の担当者、弁護士等多数の学識者からご指導ご助言を賜ることができた。また、本研究成果の一部は、法律誌及び大学紀要に掲載することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、研究計画のうち国際課税の観点から、空中権取引のステークホルダーに着目し、研究を行った。次年度は、国内外における空中権の法制度及び空中権取引の課税理論を考察したい。研究にあたり、国内外の文献資料を収集し、その解読・分析を進め、我が国の空中権取引に係る課税問題を解明したい。本年度も定例の研究会や学会に参加し、本テーマについて学識者と意見交換を行い、議論を深化させたい。
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Causes of Carryover |
本年度(初年度である平成30年度)は、出張予定の夏季休暇期間中に学務業務等が生じたため、他の期間での検討を行ったが、出張予定先との日程調整等が困難となったため、研究計画の一部を変更し、国内での研究会・学会費に充てることとした。その残余については、次年度の出張旅費等に充当する予定である。
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Research Products
(8 results)