2019 Fiscal Year Research-status Report
空中権取引の課税理論と空中権取引を利用した租税回避防止策の研究
Project/Area Number |
17K03365
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
阿部 雪子 中央大学, 商学部, 教授 (50299814)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 受益者 / 租税条約特典条項 / 租税回避防止規定 / 所得帰属ルール |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、前年度に続き国際課税の側面から、OECDモデル租税条約とコメンタリー(注釈)の第5条「恒久的施設」の概念について考察した。これを踏まえて、外国法人等が「空中権取引」を日本国内の事業体を通じて行ったスキームにおいて、その獲得した所得が「恒久的施設帰属所得」に該当する場合、所得税法、法人税法、消費税法及び相続税法上どのように取り扱われるべきかの問題を検討した。 また、「空中権取引」に係る国際課税上の問題として「受益者」条項に着目し、OECDモデル租税条約及びコメンタリーの改正の経緯を踏まえて分析を行った。租税条約上、他方の締約国(源泉地国)の居住者が利子、使用料、配当といった所得を一方の締約国の居住者に支払うときは、当該所得を受領する居住者が単なる受領者ではなく「受益者」として認定される場合には、源泉地国において租税条約上の特典が与えられる。上記の事業体におけるスキームにおいて、外国法人等が受益者に当たるかどうかは極めて重要な意味を有する。その受領者が単なる受領者でなく受益者と認められる場合、当該「受益者」は締約国の国内法において課される源泉課税の税率よりも低い軽減税率ないし免除が認められるからである。 そこで、①「受益者」の概念が導入された歴史的経緯とOECDモデル租税条約及びコメンタリーにおける「受益者」概念の改正内容等について考察した。次に、②OECDモデル租税条約の趣旨ないし目的に沿って「受益者」条項がどのようなアプローチで適用されているのか、「狭義の租税回避防止規定」であるのか、「所得の帰属」のアプローチであるのかといった観点から、カナダのPrevost連邦控訴裁判所判決やスイスのSwiss Swap連邦最高裁判決等を手掛かりに検討し、一定の所見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年2月15日開催の国際取引法学会・金融税制部会において「租税条約上の受益者条項」をテーマにOECDモデル租税条約の受益者条項の改正の経緯と受益者概念等の意義について報告を行うとともに学識者らからの意見交換により有益な示唆を得ることができた。その後、2020年3月14日に早稲田大学において開催予定の国際取引法学会の全国大会において、カナダやスイスの判例等を素材に租税条約上の受益者条項の機能等について研究成果を発表する予定であったが、新型コロナウィルス感染症拡大の影響を受けて本大会が本年9月に延期されたことなどにともない学会の成果報告等が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として、空中権の法的性質等について引き続き米国等の判例を分析するとともに定例の研究会や学会に参加し、研究者や実務家・行政官らと意見交換を行い総合的に空中権取引の課税問題について考察したいと考えている。さらに、最終年度として研究成果を学会等で報告するのみならず、学術誌や中央大学研究紀要に公表する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症拡大の影響を受けて、2020年3月開催予定の学会や研究会に参加できなかったため、交通費分について残余が生じた。この残余については、次年度の学会の出張費等に充当する予定である。
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Research Products
(5 results)