2020 Fiscal Year Research-status Report
空中権取引の課税理論と空中権取引を利用した租税回避防止策の研究
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17K03365
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
阿部 雪子 中央大学, 商学部, 教授 (50299814)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 開発権(TDR) / 受益証券発行信託 / 法人税法22条4項 / 公正処理基準 / 受益者条項 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、空中権取引に係る国際課税上の問題として、受益者条項の機能および適用範囲等について研究し、その成果を国際取引法学会全国大会(2020年9月)において報告することができた。本学会報告を通じて同分野の研究者のみならず他分野の研究者から発展的知見を得ることができた。また、本報告の成果は、国際取引法学会誌第6号(2021年3月)に掲載することができた。 さらに、本年度は、空中権ないし余剰容積率利用権を取得する買主側の資金調達の見地から考察を行い、受益証券発行信託の有用性と課題を明らかにした。受益証券発行信託は、空中権を取得する買主にとって資金調達のための重要な手段となり得ると考えられるが、他方で、受益証券発行信託に係る受託者の会計処理が法人税法22条4項に規定する公正処理基準に適合するか否かをめぐり争われた裁判例(東京高判平成25年7月19日・訟月60巻5号1089頁、東京高判平成26年8月29日・税資264号順号12523)があり、これらの判例の検討を通じて受益証券発行信託に係る租税法上の課題を指摘した。あわせて、近時、法人の会計処理が公正処理基準に従ったものかどうかが争われた最高裁判例(令和2年7月2日・民集74巻4号1030頁)を考察し、本判決については法務省における研究会での報告(2020年12月・第879回租税判例研究会)を通じて、租税法研究者や実務家から重要な示唆を得ることができた。また、本研究成果は、2021年6月発行の法律誌に寄稿する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、空中権取引に係る国際課税上の問題として受益者概念を研究し、その成果を国際取引法学会全国大会で報告し、一定の所見を得ることができた。しかし、コロナウィルス感染症拡大の影響を受けて当初予定していた国外への渡航が困難となったことから、中央大学図書館司書の協力を得ながら米国のUniversity of California, Berkeley、Pennsylvania State Universityのそれぞれの図書館から開発権(TDR)に係る文献を狩猟すべく作業を進めたが、一部資料の入手に時間を要したことなどから大学紀要論文への投稿が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、コロナ禍における新たな空中権の活用という視点から、空中権取引を促進しつつも当該取引に係る公平、中立な課税関係を構築するために、どのように税制を整備すべきかについて検討を加えていきたい。また、これまでの研究成果を法律誌及び大学紀要に掲載することを予定している。また、今後も学会や定例の研究会での口頭発表を行うことにより学識者との意見交換を通じて空中権に係る研究を深化させたいと考えている。
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Research Products
(5 results)