2021 Fiscal Year Annual Research Report
Research on the theory of taxation of air rights transactions and measures to prevent tax avoidance using air rights transactions
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17K03365
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
阿部 雪子 中央大学, 商学部, 教授 (50299814)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 空中権 / TDR / 財産権 / 同種資産の交換 / 域外貢献 / 容積率緩和 / 特例容積率の限度 / ルーリング(ruling) |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度は、日本の空中権取引の展開と課題について米国における開発権(TDR)の問題との比較法的研究を採用し、TDRと日本の余剰容積利用権の問題状況を共通の視角から探求した。まず、TDRの土地利用法上の問題として裁判例を検討し、その合憲性及び補償性等を確認した。次に余剰容積率利用権の移転の例として、早くからゾーニング制度を採用してきたニューヨーク市のTDR制度の活用状況を明らかにした。さらに米国所在の日本子会社の裁判例やルーリング(公定解釈)の事案を考察し、結論としてTDRは財産権であり、また同時に不動産と同種の資産であることから一定の要件を満たす不動産との交換は内国歳入法典1031条にいう同種資産の交換に該当することを解明し、従来、日本の租税法分野の研究において明確にしてこなかった空中権取引の課税関係やその法的性質の問題について有益な知見を得ることができた。 特例容積率の限度(建築基準法57条の2第1項)の指定に従って余剰容積率の移転を行った裁判例では、当該移転者は、当該不動産の価格の決定に当たり減価要因として考慮すべきか否かの問題について特例容積率の限度の指定に関する法的性質等に照らし、その制限の程度に応じて一定程度減少する、という結論を得ることができた。一方で、余剰容積率の移転を受けたその買主は何らかの経済的価値を取得したものと認められる可能性があることを確認した。 令和2年の東京都における都市開発諸制度開発活用方針等の改定では、緑の保全・創出、木造住宅密集地域の解消等に資する取組である域外貢献について容積率の緩和を認めるという方針を示したが、他方でそれを正当化するためには、同一の都市計画区域内における同一都市計画決定権者のもとでの住民参加と専門家の審査が不可欠であるという結論を得た。本成果は、2023年度開催の日本不動産学会シンポジウムに登壇し、報告する予定である。
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Research Products
(8 results)