2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K03371
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
蔡 秀卿 立命館大学, 政策科学部, 教授 (00262832)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
尹 龍澤 創価大学, 法務研究科, 教授 (50151767)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 法治主義 / 法治国 / 依法治国 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、東アジア(中国、韓国、台湾及び日本を指す。)における行政法の基本原則の意味内容及びその具体化の様相を比較検討することにより、東アジアの行政活動に対する法的拘束の基本原則の普遍性と特殊性を明らかにすることを目的としている。 初年度である平成29年度は東アジアにおける行政に対する法的拘束の基本原理の継受過程やその意味内容を明らかにすることを目標としている。基礎的な整序作業を行うことにより、以下のことが明らかになった。 韓国行政法の基本原理について教科書間に多少相違がみられるものの、民主国家、法治国家、福祉国家を韓国行政法の基本原理としている点で共通するといえる。台湾行政法の基本原則について論者により多少相違があるが、法治国を上位概念として、行政手続法上の「依法行政」、明確性の原則、平等原則、比例原則、信頼保護原則、誠実信用原則、裁量濫用禁止、一体注意原則などを行政法の基本原則としている点で共通する。日本行政法の基本原則について、ほぼ異論のない法治主義、比例原則、平等原則、適正な手続の原則、信義則・信頼保護の原則のほか、近年、透明性の原則や「効率性の原則」をあげている見解もみられる。中国行政法の基本原則については、まず行政法の基本原則の位置づけ・性質につき多様な見解があり、また行政法の基本原則についての分類論・体系論も多様である。1989年以来「行政の合法性原則」と「行政の合理性原則」という2分類が通説的な見解とされてきた。ところが、近年この2分論と異なる見解が次々と登場している。例えば応松年教授は以前前掲の2分論を採ったが、最新版の教科書では改訂して「行政法治」と、「行政法の具体的な原則」という新2分論を採る。馬懐徳教授は「依法行政の原則」、信頼保護の原則、比例原則をあげている。なお、「行政の効率性の原則」を行政法の基本原則としてあげている見解もある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H29年度は、まず今まで文献が乏しい中国、韓国、台湾行政法関係の教科書、判例集・事例集、文献を広く収集してきた。夏期に韓国へ行き憲法裁判所、全南大学法科大学院を訪問し資料収集を行った。中国(研究代表者が入国不能で分担者のみ)北京大学法学院や上海交通大学法学院を訪問し意見交換を行った。そのうえで各国の行政法の基本原理の全体像を整理している。全体として台湾、韓国、日本行政法について順調に進展している。これに対して中国行政法については理解不足のところが多く多様な意見が存在することで全体像を把握するには容易ではないことが判明した。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成30年及び31年は各国の行政法の基本原則が立法・行政および裁判実務においてどのように具体化するかを整理する。行政法の基本原則に関する立法例、行政法の基本原則の法令体系への反映、行政法の基本原則の裁判実務での適用例を探り出し整序していく。そのうえで東アジアの行政法の基本原則の意味内容および具体化の様相を比較検討し、東アジアの行政活動に対する法的拘束の基本原則の普遍性と特殊性を考えてみたい。
|
Causes of Carryover |
H29年度は各国(韓国、台湾及び中国)行政法の全体像を把握するために各国行政法関係教科書、判例集、資料集等を中心に購入している。H30年度は引き続き裁判集、事例集、判例分析などを中心に購入する予定である。また日本行政法について近年の行政法教科書類、判例集等も網羅的に購入する予定である。
|