2019 Fiscal Year Research-status Report
国際刑事司法制度の効率性に関する基礎的研究:訴追戦略と国家の捜査・訴追義務
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17K03380
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
竹村 仁美 一橋大学, 大学院法学研究科, 准教授 (10509904)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 国際刑事司法 / 国際刑事裁判所(ICC) / 国際刑事法廷 / 捜査・訴追義務 / 効率性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、国際社会の関心事である重大犯罪を行った個人の刑事責任を追及する際、被疑者・被告人の人権を保障しながら、国際刑事司法制度を効率的に運営するための国際・国内裁判の役割について、国際刑事司法機関検察局の訴追戦略と重大犯罪に対する国際法上の国家の捜査・訴追義務の研究によって明らかにしていくことにある。
研究項目は、①国際刑事司法の効率性評価基準と効率性の基礎的研究、②国際刑事法、国際人権法上の国家の捜査・訴追義務に関する解釈論の整理、③国際刑事司法機関の検察局の訴追戦略と国家の捜査・訴追義務の関係性、④国際刑事司法制度の実効性と正統性の調和的実現のための効率的制度設計の基礎的研究の4つである。
2019年度は2018年度の研究を承継・補完しながら、④の研究の総括へ向けて、資料の読解や理論構築に努めることを目標とした。さらに、2017年度の研究項目中の海外調査を2019年度中に補完的に行った。具体的には、国家の捜査・訴追義務について、各国国内法が、どのような範囲で、国際法上の犯罪行為を捜査・訴追する義務があると認識しているのかどうか、国内法状況に関する調査である。2019年の11月には、国際法上の犯罪について捜査対象とされているクライアントを持つ弁護士にロンドンとブリュッセルで聞き取りを行い、オランダでは平和宮図書館で資料収集ができた。さらにドイツ連邦検察局との面会予約が2020年1月末にとれたので、2020年度の海外渡航のための研究費を前倒し請求して2020年1月末にドイツ検察局での聞き取り調査を行うこととした。そして、英語での成果発表が懸案事項であったが、2019年11月にルーマニアのジョージバコヴィアバカウ大学における国際会議で英語による研究発表を行い、またその報告を基にした原稿を図書の分担執筆の形で2020年1月に寄稿し、近々発行予定となり一定の成果を出せた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は、前年度までに完了できなかった①イギリス・ベルギー・ドイツの国内刑事司法における国際犯罪の捜査・訴追義務に関する意識調査、②海外での研究報告という2つの課題を達成し、さらに本課題の研究成果を不十分ながら一定程度英語でまとめて、本研究を総括するような理論構築に時間を割くことができたことを踏まえ、大局的に見て順調な研究進捗状況といえるので、この評価に至った。ただし、聞き取り調査に関しては、刑事事件という特性から、その調査内容の公表については差し控えるよう要請されることもあり、研究成果への調査内容の反映という点では課題が残る。
2019年度の海外渡航を通じ、イギリスのHuman Rights Lawyers Association、国際刑事裁判所の最初の被告人の弁護人を務めたベルギー人弁護士、ドイツ連邦検察局の国際法上の犯罪の捜査・訴追を担当する検事と面識ができたという点も2019年度の研究の成果の重要な要素となっていると考える。海外での研究報告は英語で行い、またその報告をもとにした論稿も分担執筆の形でルーマニアで刊行予定の図書へ2020年1月に寄稿した。この点、英語での研究成果の公表も引続き模索していく必要がある。さらに、2019年度に中心的に行う予定であった「国際刑事司法機関の検察局の訴追戦略と国家の捜査・訴追義務の関係性」の研究については、その内容に様々な課題は残るもののMax Planck Encyclopedia of International Procedural Lawという英語で編纂された国際手続法百科事典において積極的補完性の項目を英語で担当し、2019年度に公表することができた。国際刑事司法機関の検察局の訴追戦略と国家の捜査・訴追義務の関係性については、最終年度に行う研究の総括と並行して、より深く研究していきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の最終年度に当たる2020年度には、国際刑事司法の正当性、正統性を確保しながら、国際刑事司法の効率化を高めていくため、国際人権法の国内実施の確保、国際裁判と国内裁判との役割分担を見据えた包括的制度設計を考案する。国際刑事司法の効率的運営のための制度設計について、学術的立場から国際社会・国内社会への一定の提言が行えるよう理論・実証研究の精度を高めていきたい。2020年度の海外渡航費は2019年度に前倒しで請求して使用したため、2020年度は本研究費を利用した海外での聞き取り調査や資料収集がかなわないが、2019年度に得た情報や平和宮図書館の遠隔利用の有効期限を活かして2020年度に研究成果の総括・執筆を行なっていく所存である。
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