2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K03387
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
中野 俊一郎 神戸大学, 法学研究科, 教授 (30180326)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 国際私法 / 国際民事手続法 / 国際仲裁 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、国際仲裁・国際民事訴訟による紛争解決がどのように国家法や国家司法制度の束縛から離れつつあるかを、各国の仲裁実務・仲裁法制やシンガポール国際商事裁判所の例などを用いつつ比較法的に示す論稿を準備し、台北の台湾法官學院における招待講演において報告した。この講演会では、国際裁判管轄や国際訴訟競合、外国判決承認といった国際民事手続法分野に関する日本の最高裁判決の最近の傾向や問題点についても報告し、現地の実務家や研究者と交流し、意見交換する機会を得た。このほか、日本の家庭裁判所での離婚調停で得られた合意にどのような国際的効力が与えられるべきかという問題について、韓国、中国、台湾の研究者と共同研究を行い、研究会やメールでの意見交換を経て、論文にまとめた。これは「現代家族法講座」(日本評論社)において公表予定であり、初校を終えた段階にある。また、国際仲裁に関する各国判例について、シンガポールの実務家との共同判例研究を継続し、JCAジャーナル誌上で連載したほか、国際私法、国際民事手続法に関する2本の判例評釈を公表した。以上に加えて、国際家族法関係の裁判例について、実務家・研究者ら約20名から成る研究会(渉外家事事件判例研究会)を座長として主宰し、3ヶ月に1度、定期的に研究会を開いたうえで、「戸籍時報」誌において、メンバーによる研究成果を公表している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究計画は、ほぼ予定通りに遂行することができたと考えている。周知の通り、2020年2月頃からコロナウィルスの問題が発生し、外国共同研究者との行き来は停止しており、国内でも、研究会や学会の開催中止が相次いでいるが、メールとインターネットを利用することにより、外国の共同研究者との間での研究連絡に関しても、ほぼ支障のない状態が維持できている。3月には上記渉外家事事件判例研究会の例会が予定されており、開催の中止も懸念されたが、zoomを利用したウェブ会議に切り替えることによって、何とか研究会を実施することができた。他方、2月末に大阪の関西大学で予定されていた国際民事執行に関するシンポジウムは中止となり、そのために準備していた、ミヒャエル・ケスター教授による子の奪取と国際的な面会交流の実施に関するドイツ語報告の日本語訳は公表できないままとなった。これはやや遺憾なことであったが、同教授からは翻訳の許諾を得ていることから、何らかの形で公表できないか、次年度に模索することとしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、コロナウィルスの蔓延による混乱が大きな不確定要素となっており、所属大学の講義も5月まで開始できない状況ではあるが、本研究計画の実施は粛々と進めるよう努力することとしたい。出版が遅れている日本・韓国・中国・台湾での共同研究の成果公表がまず第一であるが、これについては、今年度早い段階で実現するものと期待している。他方、昨年度の研究の過程で、仮処分・仮差押えといった仮の権利保護手続における準拠法決定及び外国法の適用について、わが国では十分な研究がこれまでされてこなかったが、オーストリアではいくつか興味深い判例の進展があることを知った。迅速な権利保護の実現という観点からすると、従前のような、国家法や国家司法制度の強い縛りを前提とした国際私法・国際民事手続法の枠組みが、保全手続でも十分機能しうるかについては問題があるように思われ、今後は、やや時間のかかりそうなテーマではあるものの、これについても検討を開始するべく、資料収集等の準備を進めている。
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Causes of Carryover |
台湾での資料調査を予定していたが、招待講演となったため出張旅費を使用しなかったことに加え、今年度に購入を予定していたいくつかの外国のコンメンタール、研究書の公刊が次年度にずれ込んだため。
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