2020 Fiscal Year Annual Research Report
Plurality of legal norms and denationalization of dispute resolution
Project/Area Number |
17K03387
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
中野 俊一郎 神戸大学, 法学研究科, 教授 (30180326)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 国際仲裁 / 国際私法 / 国際民事手続法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、まず、従前の研究成果を取りまとめる過程において、国家による紛争解決が国家色を薄めるに従い、国際私法が指定する外国法の適用のあり方に変容が認められることに思い当たった。そこで、裁判所に準拠外国法の厳格な職権調査義務を課してきた従前の国際私法学説を再検討するとともに、国際仲裁、国際民事保全という、とくに迅速性が求められる紛争解決類型を取り上げ、そこでの外国法適用のあり方について、比較法的見地から調査することとした。国際民事保全については、ドイツ法を中心とした調査の結果、外国法の調査・適用を裁判所の職権に委ねるという基本は維持されるものの、迅速性の観点から、当事者に調査や主張の義務を認める、事案によっては法廷地法の適用を認めるといった特殊な取扱いが認められてきたことが判明したことから、その成果を論文として専門誌上に公表した。他方、国際仲裁における準拠法の調査・適用については、各国での実務的取扱いに不透明な部分が多く、なお時日を要すると考えられたため、次年度以後、新たな研究プロジェクトとして継続的に検討することとした。 また、従前の研究の過程では、紛争解決が国家性を薄めることの一つの顕れとして、裁判所での紛争解決が合意による紛争解決に重点を移しつつあること、その場合の問題として、裁判所で得られた合意の効力を国家間でどう確保するかが問題になることが判明した。そこで、日本と人的・物的交流の盛んな近隣三か国(韓国、台湾、中国)に焦点を絞り、離婚調停で得られた合意が相互的に承認されるか、という問いを設定し、これら3ヶ国の専門家と国際共同研究を行った。その結果、これらの国々との間では、調停で得られた合意が、判決とほぼ同様の要件で承認されうることが判明したため、その成果を論文として共同執筆し、「現代家族法講座」第5巻『国際化と家族』(日本評論社)に寄稿した。
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