2021 Fiscal Year Annual Research Report
Comparative Study for Regulations on Multiple Nationality in Asian Countries
Project/Area Number |
17K03389
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
佐野 寛 岡山大学, 社会文化科学研究科, 特命教授 (40135281)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青木 清 南山大学, 法学部, 教授 (80159277)
伊藤 弘子 名古屋大学, 法学研究科, 学術研究員 (90340364)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 国籍 / 重国籍 / 国籍法 / 外国人 / 市民権 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、諸国の国籍法の相違から発生する重国籍の課題について、国籍法、外国人法および国際私法を中心として、比較法制研究の方法により、分析、検討を行うことを目的としている。具体的には、重国籍を容認する傾向にあるヨーロッパ諸国の法制を検討し、その実態を明らかにする。次に、重国籍の発生状況について、日本と関わりが深いアジア諸国の法制を、聞き取り調査を含めて検証し、その実態を明らかにする。そして、以上の理論的考察および実態分析を基礎として、わが国の現行の法政の問題点を浮き彫りにし、現行制度を見直す手がかりを得ようとするものである。とくに、本研究では、従来のように、単に重国籍の解消という視点から重国籍の問題を捉えるのではなく、現在のグローバル化する社会では不可避といえる重国籍の発生を前提として、重国籍者の処遇に関する問題を理論面と実際面の両面から検証し、現行の制度を見直す基礎作業を行う。 今年度は、これまでの調査を踏まえて、昨年度に引き続き、研究分担者が学会、研究会で研究報告を行った。具体的には、研究分担者の青木が、2021年9月開催の国際法学会で「本国法の探究ー国籍と法域」と題して、本国法決定における国籍の意義について報告し、12月に開催されたアジア法学会では、伊藤が移民受け入れをめぐる法的枠組みについて報告した。 これらの調査および研究を踏まえて、本研究の最終年度として、2022年3月に成果報告会を開催し、以下の3点について提言を行った。第1に、すでに相当数の重国籍者が存在することを前提として、「国籍単一の原則」の見直しを図る、第2に、重国籍の容認を前提として、重国籍者の処遇を検討する、第3に、国籍離脱者が増加していることなどを考慮し、今後、国家の戦略として、国籍のあり方を検討する必要があることである。当日は、国際政治、政治学、憲法の研究者から貴重なコメントを得ることができた。
|