2018 Fiscal Year Research-status Report
A Study of Reparatory Jutice
Project/Area Number |
17K03393
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
最上 敏樹 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (70138155)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 補償的正義 / 戦間期全体主義 / 多国間主義/マルティラテラリズム / 市民権 / 国際法と時間 / グローバル・ヒストリー |
Outline of Annual Research Achievements |
申請課題に関連する文献および資料の収集等は順調に進んでいる。これまでのところ、植民地主義の諸遺制の研究、戦間期における全体主義諸国の国際協働の研究、多国間主義の歴史的変遷あるいは発展の研究、国民国家システムの変遷と変貌における市民権/国籍の意義の研究などの細目に網の目を広げてきた。 これらの諸問題の研究深化のために、2018年8月~9月、および2019年3月の2度にわたり、昨年度に引き続いてバーゼル大学ヨーロッパ研究所(ヨーロッパ・国際問題研究所)に滞在して、所長ほかの所員と共同研究を精力的に進めた。同研究所は植民地主義の研究において世界的に評価されている研究機関であり、同所における共同研究はきわめて大きな成果をもたらしている。 多国間主義(multilateralism)の研究は中核となった歴史問題の研究の外延として浮かび上がり、それについても研究所内外の研究者を国際的に糾合して共同研究を開始した。すでに刊行計画も進み、その内容の確定等につき実質的な協議を始めるに至っている。また市民権/国籍の研究は、歴史的に多くの個人において犠牲を生み出してきた問題であり、研究所の中心課題にもなり、申請者もそれに国際参加の形で参与する。国際的不正義の問題でありながらこれまで国際法的な解明がほとんどと言ってよいほどなかった分野であり、その学問駅処理の過程が順調に開始されたことは大いに有意義だと考える。 いずれにおいても、グローバル・ヒストリー論の潮流を踏まえており、それによる結節効果を念頭に置きながら立体的な研究を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
「概要」記載のとおり、当初の予想以上の成果につながっている。
|
Strategy for Future Research Activity |
日本において自己単独の研究をするほか、これまでとほぼ同様に、バーゼル大学ヨーロッパ研究所にしばしば滞在し、共同研究を精力的に進める予定である。具体的には第一に、市民権/国籍に関する研究プロジェクトの遂行を行う。これには同研究所における共同研究に加え、ジュネーヴに赴いて国連図書館の資料を渉猟して国際法的観点からの貢献をすることを予定している。必要に応じ、ロンドン等にもおもむき、植民地関係の国際訴訟等についても研究を深める。 また第二に、多国間主義(multilateralism)に関する共同研究も急速に進める。この問題を、単なる「幅広い国際協力」という問題ではなく、国際的正義の実現の可能性および限界の問題と捉える点で共同研究参加者は一致しており、かなり早い時期にそれぞれの研究成果を持ち寄り、出版物につながる見通しである。 これらにより、申請者の当初の研究計画にさまざまな外延の肉付けができ、有意義な研究過程が実現している。
|
Causes of Carryover |
共同研究の相手方であるバーゼル大学・ヨーロッパ研究所が、研究滞在する際に大学宿舎の宿泊費をほとんどすべて負担してくれているため、その分が大幅に節約できた。次年度もひき続きしばしばバーゼルで共同研究に従事するため、節約できた額を旅費交通費および日当に充当させていただく。
|