2017 Fiscal Year Research-status Report
グローバル・コモンズを巡る中国による国際法形成に関する動態的研究
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17K03395
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
池島 大策 早稲田大学, 国際学術院, 教授 (50255577)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | グローバルコモンズ / 海洋 / 宇宙空間 / サイバー空間 / 環境 / 中国 / 国際法 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)英語論文‘The Notion of Global Commons under International Law’, (2)英語論文 ‘Diplomatic and Legal Challenges to the Historic Legacies of Japan’s Territorial Disputes’,(3)英文書評‘Avoiding War with China: Two Nations, One World by Amitai Etzioni, 2017,(4)英文書評‘Sea Power: The History and Geopolitics of the World’s Oceans by Admiral James Stavridis, 2017.’, (5)英文書評‘The Challenge of Global Commons and Flows for US Power: The Perils of Missing the Human Domain by Mika Aaltola, Juha and Valtteri Vuorisalo, 2014 ’.(6)海のコモンズ研究会でグローバル・コモンズ(GC)の概論に関する口頭発表、(7)環境問題の研究会で北極海の環境問題の口頭発表。 (1)でGCの概念に関する、軍事・安全保障に偏った近時の米国の傾向に批判的考察を行った。(2)で日本を取り巻く領土問題を中心に中国の動向に触れ、領域問題の処理に関する多様な方策を論じた。(3)で中国の今後の動きを、(4)で世界の海洋を支配するシー・パワーの概念を、そして(5)で米国の一時的なGCの誤用を、GCの現代的意義と米中二大国の意義として論じた。近時の課題につき、領域の観点、環境問題の観点、米中の動きから、GCの総論的な考察を行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画の初年度としては、概ね順調であったといえる。その理由は、以下の大きな要点を得られたからである。つまり、(1)初めに、グローバル・コモンズの概念の総論的な考察を行うことで、各論に入る前の大まかなロードマップやその概観が得られたため、今後の2年間の時間の割り振りにめどをつけることができた点、(2)中国の国際的な動向から、グローバル・コモンズに限らず、環境保護、貿易などの分野で国際法形成過程に新たなかつ大きなインパクトを有し得る事象が生じ始めていることが分かってきた点、(3)米国のトランプ政権下での新たな保護主義的かつ一方的な政策遂行により、中国が一帯一路や氷上のシルクロードを通じて、また世界貿易機関(WTO)下における多国間協調主義を唱えたりすることで、戦後秩序の守護者とチャレンジャーが入れ替わってしまったかのような様相を国際社会が呈するようになった点、などのポイントがあげられる。 以上から、初年度として押さえておくべき今後の道筋は、中国の動向の与えるインパクトをどこまで深くかつ正確に把握することができるかに依存するであろう。次に、グローバル・コモンズという概念が今後、どのような意味を持ちうるか、それともすでに一定の役割を果たし終えた過去のものといえるかどうかを再確認することも必要となる。残されたコモンズのドメインとして、サイバー空間や宇宙空間について具体的な考察を行う必要が高まったという点も再認識できた。 このように進捗状況を把握できたことは大きな収穫であり、今後の研究の土台作りと展望の把握が可能となった初年度は、概ね順調に進んでいるということができよう。今後は、慢心せずに、このペースを更に加速させる努力を続けていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでのところ概ね順調な経過とは言えるものの、いくつかの課題が今後あり得ることを以下のように、現在は把握している。第一に、中国の動向は情報公開の点からも、現在進行形であるという点からも、正確な把握という点で簡単なものとは言い難い。そこで、対応策としては、公式発表の文書、国家実行として確認された事実などに限定し、それを信頼しうるに足るソースからの情報やデータに限って、検討対象とすることで対応したいと考えている。第二に、グローバル・コモンズに直接関連するとは言えない貿易の分野における最近の動向にも注視する必要が生じている点である。これは、大事な動きではあるので、直接的な影響や効果は、他のドメインであるサイバー空間や宇宙空間の検討が済んでからとすることで、時間的な差異を設けたい。第三に、これら残りのドメインについては、最近の急速な動きでもあるところから、時間的に限定された把握に止まる可能性があることから、その対応として、時間的な区切りをここ数年の動きないしは10年以内(特に習近平体制下の状況のような区切りを設けること)のことに限定したい。 以上のように、現在考え得る遂行上の課題への対応策を列挙してみた。いずれも臨機応変かつフレキシブルな時間的、対象的な範囲の制限等でメリハリをつけて何とか乗り切りたいと考えている。
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