2018 Fiscal Year Research-status Report
欧州人権条約の国内実現における欧州人権裁判所による司法的外交の法的基盤
Project/Area Number |
17K03397
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
徳川 信治 立命館大学, 法学部, 教授 (60280682)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 欧州人権条約 / 欧州人権裁判所 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、欧州人権裁判所と締約国との間における様々なチャネルを通じた対話の法的基盤とその実効性を検討することである。今次変革が著しい欧州人権条約システム、その司法機関たる欧州人権裁判所の機能に対して、対審による争訟管轄のみならず、締約国裁判所に対する諮問機能をも付与されようとしている。こうした人権裁判所の機能の変化は、増加の一途をたどる申立件数への対処として説明されているが、他方で欧州人権裁判所の国際裁判所としての司法機能はこれまでとは異なる次元に進むことが予想される。この点に関する欧州評議会諸機関(閣僚委員会及び議員総会) 、さらには締約国の各機関の間における判決およびその執行にかかわる取り組みと対話、さらにはその法的基盤を明らかにしようとするものである。 2018年度は、2018年に開催された、欧州人権条約システム改革に関する欧州評議会ハイレベル会合において採択されたコペンハーゲン宣言の採択をめぐる攻防について検討を行い、その一部を欧州人権条約における国際手続きに関する変遷を整理したものをまとめた。ここでは、各国の憲法的伝統と国内事情を考慮しつつも、欧州人権条約の基準とのバランス、さらには欧州人権裁判所の積極主義的活動に対する制約についての攻防があったことがわかった。この点は、2012年ブライトン宣言、さらには第15議定書への流れとの関係を整理しつつ、検討作業を行った。また第16議定書の採択における欧州評議会各政治機関(閣僚委員会及び議員総会)による判決執行に関わる議論的特徴を確認しつつ、欧州人権裁判所の機能変化に対する欧州評議会規程や欧州人権条約上の法的基礎を明らかにする作業を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2018年度は、2018年に開催された、欧州人権条約システム改革に関する欧州評議会ハイレベル会合において採択されたコペンハーゲン宣言の採択をめぐる攻防について検討を行い、その一部を欧州人権条約における国際手続きに関する変遷を整理したものをまとめたものの、それをもう一歩進め、各国の憲法的伝統と国内事情を考慮しつつも、欧州人権条約の基準とのバランス、さらには欧州人権裁判所の積極主義的活動に対する制約についての攻防があったことがわかり、この点のまとめを試みていたが、そこまでには到達できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は、継続してきた研究成果を踏まえ、研究課題の本格検討作業を行う年度となる。研究主題とのかかわりにおいて、2019年は、欧州評議会設立70周年及び欧州人権裁判所設立60周年という節目に当たる。そのため、欧州評議会などにおいて、改めてこれまでの欧州人権条約をめぐる活動に対する振り返りが予定されているところでもある。この動きについて丹念にフォローをしつつ、研究課題の最終年度であるため、これまでの研究成果の理論化を行う。以上の研究成果を、邦文及び英文にて取りまとめて公表する。
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Causes of Carryover |
年度末(2019年2-3月)に国外出張を予定し、かつ、旅費の高騰が予想されたため、その予算をできる限り確保する方策をとっていた。しかしながら、ヒアリング対象となる研究者の日程の都合と校務事情により、国外出張を実施することができなかった。ただ、書籍購入につき、2019年度納入の見込みが立っているので、その支払いに充てる。 今年度も、同様の活動を予定しているので、そのための計画的執行に努める。
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Research Products
(1 results)