2017 Fiscal Year Research-status Report
個人請負型就業者に関する保護規制の現代的あり方:比較法的検討を通じて
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17K03417
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Research Institution | Himeji Dokkyo University |
Principal Investigator |
大木 正俊 姫路獨協大学, 人間社会学群, 准教授 (00434225)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 社会法学 / 労働法 / イタリア / 個人請負型就労 / クラウドソーシング |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は、資料収集を行いつつ、イタリア法を中心とした立法・判例の分析をおこなった。本研究プロジェクト開始後の2017年5月にイタリアでは個人請負型就労者を対象とした立法がなされており、本研究が比較法的分析の鍵として位置付けているイタリアにおいて、個人請負型就業者の保護立法ができたことは重要な意味をもつことから、申請時点での研究計画を基にしつつも、本研究プロジェクトにおいては同法の分析に多くのエネルギーを割くこととした。 この立法の特徴は、請負代金の確保や優越的地位の濫用規制など、経済法的な規制を個人請負型就労者にも適用したことである。現在は、立法の内容の正確な把握をしたうえで、立法の経緯や立法に対する専門家の評価などから、同法の意義を明らかに作業を行い、その成果を論文の形で公表する予定である。。 今後は、当初の計画通り、立法・判例研究と理論研究を同時に進めていくが、特に理論研究に比重を移しつつ、初年度に収集した資料の分析のほか、追加的な資料収集とそれらの分析をおこなう。立法・判例研究に関しては、引き続きイタリアの2017年法の分析を進める。理論研究については、申請段階においては労働法の基礎理論の新潮流に着目した研究を予定していたが、イタリアが2017年法において経済法アプローチを採用したことなどから、経済法の基礎理論も含めて、より広い視野から理論研究を進めるべきとの認識をもつにいたったことから、労働法の基礎理論研究に並行して経済法の基礎理論の分析も進めていく。 初年度は、個人的な事情が重なり、海外調査を行うことができなかったが、2年目には海外調査をおこない、イタリアの研究者などにヒアリング調査を実施して、イタリア法の正確な理解に努めるとともに、日本で入手困難な資料を入手し、分析をすることとする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、資料収集を行いつつ、イタリア法、さらには欧州各国法における個人請負型就業者に関する立法・判例の分析を通じて、個人請負型就業者に関する規制の内容を明らかにする作業をした。当初の研究計画通り、1973年家内労働法、2003年ビアジ法、1998年下請法などの立法経緯、その後の改正、関連する裁判例(憲法裁判所判決も含む)などを入手し、検討した。また、本研究プロジェクトの分析視角を提供してくれる、非正規雇用と個人請負型就業者の同質性(類似性)を明らかにした論文を出版した。 なお、本研究プロジェクト開始後の2017年5月にイタリアでは個人請負型就労者を対象とした立法がなされた。本研究が比較法的分析の鍵として位置付けているイタリアにおいて、個人請負型就業者の保護立法ができたことは重要な意味をもつ。したがって、今後は申請時点での研究計画を基にしつつも、本研究プロジェクトにおいては同法の分析に多くのエネルギーを割くこととする。 この立法の特徴は、請負代金の確保や優越的地位の濫用規制など、経済法的な規制を個人請負型就労者にも適用したことである。さしあたり、立法間もない現状においては、立法の内容の正確な把握をしたうえで、立法の経緯や立法に対する専門家の評価などから、同法の意義を明らかに作業が有用と考えられる。 現在は、2017年法の翻訳作業および関連する文献の収集・分析を進めているところであり、その成果を2年目に論文の形で公表する予定となっている。また、同法が経済法アプローチを採用したことから、同法の分析にあたっては経済法研究者の助力を得ることとする。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、当初の計画通り、立法・判例研究と理論研究を同時に進めていくが、特に理論研究に比重を移しつつ、初年度に収集した資料の分析のほか、追加的な資料収集とそれらの分析をおこなう。 立法・判例研究に関しては、引き続きイタリアの2017年法の分析を進めつつ、個人請負型就業者に関する規制の一つのモデルとして、いかなる意義をもつのか、それが日本の立法論にいかなる示唆を与えるのかを中心に検討する。2017年法の分析結果については、2年目のうちに論文のかたちで公表することを考えており、現在準備を進めているところである。判例研究については、判例の数が多くなることが予想されることから、現在、データベースの契約を検討しているところである。データベースが利用できれば、文献収集の時間が大幅に短縮されるためである。 理論研究については、申請段階においては労働法の基礎理論の新潮流に着目した研究を予定していたが、イタリアが2017年法において経済法アプローチを採用したことなどから、経済法の基礎理論も含めて、より広い視野から理論研究を進めるべきとの認識をもつにいたっている。したがって、労働法の基礎理論の分析を進めつつも、それに並行して経済法の基礎理論の分析も進めることとする。分析にあたっては、経済法研究者の助力を得る体制はすでにあり、現在、経済法研究者の助言をえつつ文献の収集を進めている段階にある。 初年度は、個人的な事情が重なり、海外調査を行うことができなかったが、2年目には海外調査をおこない、イタリアの研究者などにヒアリング調査を実施して、イタリア法の正確な理解に努めるとともに、日本で入手困難な資料を入手し、分析をすることとする。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、個人的な事情が重なり海外調査をおこなえなかったため海外旅費として支出予定だった金額を全く使えなかったこと、研究代表者の所属先変更が決定されたため海外図書の購入などにおいて年度内に確実に図書購入の経費処理をおこなえない可能性があることなどから、図書購入などを手控えたことが原因となっている。 海外調査については、2年目以降に前年度分も含めておこなうことを予定している。また、手控えた分の図書の購入を2年目以降に行うを予定している。
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