2019 Fiscal Year Annual Research Report
Rethinking the Regulations on the Protection of Independent Workers: A Comparative Analysis
Project/Area Number |
17K03417
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
大木 正俊 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (00434225)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 社会法学 / 労働法 / イタリア / 個人請負型就労 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、イタリア法の検討に力を入れた。第一に、2017年に制定された独立労働に関する新たな保護立法のうち、特に注目される3条の経済的従属の濫用の禁止に関する分析をおこなった。同法3条4項において、「矛盾しない限りにおいて」適用するとされている1998年に制定された下請関係を規制される立法(1998年法律192号)上の規定の分析をおこなった。その結果、1998年法の規定は下請を超えて拡張されて適用されていること、経済的従属の濫用の拡大は、この法理の位置づけについて「競争法上の規制と見てよいか」などの疑義を引き起こしていることが明らかとなった。 第二に、イタリアで注目を集めていたプラットフォーム・ワーカーの労働者性に関する事件の分析である。この事件では、スマートフォンアプリなどを利用した食料配達員の労働者性が問題となったが、2018年一審では1980年代から1990年代にかけて出されたバイク便宅配員の労働者性を否定した判例を踏襲し、配達員の労働者性を指定したが、2019年の第二審では労働者保護の一部を適用することを認め、2020年1月の破毀院判決においては、全面的な労働者性を認めるというスリリングな展開をみせた。本年2月上旬にイタリアで実施したインタビューにおいては、イタリアの研究者より、従前の労働者性に関する判例とは明らかに異なる判断をした点、2017年に独立労働者の保護立法が整備されたにも関わらずあえて労働者であると判断した点に意義がある判決だとの第一印象をもっているとの回答を得た。今後の課題は破毀院判決と2017年法の関係をどのように捉えるかであろう。 この他に日本法の検討の前提となる日本の労働市場法制の課題について検討する作業をおこない、その成果を論文として公表した。
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