2020 Fiscal Year Research-status Report
賃金格差の正当性に関する比較法研究-英・米・加の賃金差別禁止法理の分析
Project/Area Number |
17K03419
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
所 浩代 福岡大学, 法学部, 教授 (40580006)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 男女差別 / 賃金差別 / カナダ法 / アメリカ法 / イギリス法 / 同一価値労働同一賃金 / プロアクティブ法 / 女性労働 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、イギリス、アメリカ、カナダの賃金平等法制を分析し、いかなる場合に異なるグループ間の賃金格差が正当化されるのかを明らかにすることにある。 本研究は、当初3年間の予定であったが、COVID19感染拡大の影響を受けて、2019年度と2020年度に予定していた研究が計画より大幅におくれた。その原因は、文献調査に必要な書籍の入手に大幅に時間を要したこと、図書館の閉鎖が長引き、所蔵されている雑誌が閲覧できなかったこと、書籍利用の代替手段として有料DBの契約などの準備に時間を要したこと、比較対象国へのインタビューをオンラインに切り替えるため、PCや安定したインターネット回線の用意が必要だったこと等である。現段階において、ようやく研究環境が改善されたので、最終年度となる2021年度に研究の遅れを取り戻し、必要な研究を完成させたい。 研究の進捗であるが、2020年度は、すでに入手済みのカナダ資料を利用して、カナダの国内法の状況を整理分析した。カナダ労働法制は、連邦・各州合わせて11の法管轄があり、東側の複数の州と連邦は、性に基づく構造的な賃金差別を是正するためにプロアクティブ方式の賃金衡平法を導入している。対して西側の州は、プロアクティブ方式が費用と時間を要する割に是正効果は限定的になることから、苦情申立方式にプロアクティブ方式を加えることに否定的な姿勢をとる。カナダ全体の状況とプロアクティブ方式の課題について、2つの論考を執筆し、1編が2020年6月に公表された。他方は原稿を提出済みであり、2021年度内に公刊が予定されている。 また、国内の判例法理の動向についても、外国法研究と並行して検討した。労働契約法20条に関する重要な裁判例が5つ示されたので、そのうちの2裁判例を取り上げて、判例評釈を公表している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究は、当初3年間の予定であったが、COVID19感染拡大の影響を受けて、2019年度と2020年度の研究が計画より大幅におくれた。その原因は、文献調査に必要な書籍の入手に大幅に時間を要したこと、図書館の閉鎖が長引き、所蔵されている雑誌が閲覧できなかったこと、書籍利用の代替手段として有料DBの契約などの準備に時間を要したこと、比較対象国へのインタビューをオンラインに切り替えるため、PCや安定したインターネット回線の用意が必要だったこと等である。
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Strategy for Future Research Activity |
現段階では、PCの接続環境が整い、オンラインでの研究会が容易になった。また、物流も随分改善し、文献の入手スピードも上がった。本年度は、最終年度であるので、イギリス法、アメリカ法の調査を迅速にすすめ、研究成果をまとめたい。
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Causes of Carryover |
カナダの現地調査のための旅費が、残っている。 2021年度秋以降に、現地と日本の状況が改善されれば、速やかに計画を実行したい。 感染状況が改善しない場合は、オンライン会議でのインタビューと文献調査によってこれを補いたい。
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