2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K03422
|
Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
西岡 正樹 山形大学, 人文社会科学部, 准教授 (40451504)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 刑法 / 責任概念 / 責任主義の原則 / 常習犯加重 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、わが国の現行刑法典および特別刑法に存在している常習犯規定を研究対象とする。所定の犯罪を反復累行する習癖を有するとされる常習犯に対しては、わが国のみならず、諸外国においても様々な対策がなされてきた。諸外国においては、危険な常習犯に対して保安処分によって対処しようとする刑事制度も現存する。しかしながら、それらの国々においても、常習犯加重が責任主義の原則と調和し得ないという認識は広く認められてきたところである。 常習犯ないし常習犯規定に関しては、これまでのわが国の刑事法学において重要な先行研究が数多く存在する。ただし、それらの大半は、刑法改正論議が華やかであった1970年代前後に集中しており、常習犯問題は21世紀を迎えた近時の刑事法学において考察の対象とされることが少なくなっている。しかし、常習犯研究の現代的意義が失われたわけではなかろう。 本研究は、諸外国との比較法研究を基礎として、わが国の常習犯加重規定が存置に耐え得るものであるかについて批判的に検証するという視点から、当該規定が孕む問題点を抉り出し、あるべき常習犯対策を模索するための指針を提示することを目的とするものであり、この点に、本研究の意義がある。 今年(平成30年)度は、昨年(平成29年)度に引き続き、刑事責任論に関する研究代表者のこれまでの研究を下地として、常習犯加重の根拠について、先行研究における議論を踏まえつつ再検証した。具体的には、ドイツ、スイスおよびオーストリアのドイツ語圏刑法における常習犯規定ないし常習犯対策について考察し、わが国における対応との異同を理論的に明らかにすることを試みた。なお、今年度は、常習犯加重の根拠との関係で問題とされる違法性の意識に関して考察した論稿(「法の不知に関する一考察」法政論叢70・71合併号167-208頁)を公表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」においても言及したように、今年度は、ドイツ語圏刑法における常習犯規定ないし常習犯対策について考察することを研究計画としていた。当該計画については、おおむね順調に進展し、今年度までの研究成果については、来年(平成31年)度に公表する予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は、わが国の常習犯加重規定が孕む問題点を抉り出し、あるべき常習犯対策を模索するための指針を提示することである。 上記の目的を達成するため、研究最終年度である来年度は、昨年度および今年度の研究成果を公表するとともに、現行刑法の常習犯規定の合理性を検証し、あるべき常習犯対策を模索するための指針を考究する。
|