2018 Fiscal Year Research-status Report
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17K03423
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
樋口 亮介 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (90345249)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 主要事実 / 共同正犯 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は共同正犯について論稿を発表した。 研修誌上に発表した「共謀共同正犯における共謀の意義」は共謀の実体法上の内容について解明することで、主要事実の特定が可能になることを明確にした。共謀=犯罪実行についての合意というシンプルな理解は、犯罪実行者の主観的意識を主要事実の立証において取り上げることが必要であることを指摘する点で、近時の議論の一面性を是正するものである。また、著名な最高裁判例3件についてケーススタディー方式によって主要事実を明確にする作業を実際に展開することで、実務への指針になる作業を行うことができた。 また、井上正仁先生古稀祝賀では実行共同正犯を論じ、共謀共同正犯とは主要事実が異なることを明示した。実行共同正犯と共謀共同正犯を区別しないことで、共同正犯の主要事実が茫漠としていることを問題とし、両者を区分することによって主要事実の特定が可能になることを明示した点で、近時の議論と一線を画すものである。最高裁においても実行共同正犯を意識した判断が危険運転致死傷罪で下されているところ、実行共同正犯に絞って議論を展開した論文は我が国では本論文しかなく、今後の議論を指導するものを発表することができた、といってよい。 以上、共同正犯という古典的テーマについて、主要事実の明確化という問題意識の元、過度に抽象的な議論をさけて、実務に指針を与える論文を発表することができた。今後の我が国における議論の基礎を築くことができたといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
過失犯について2017年度に徹底した検討を行い、2018年度には共同正犯について2本論文を発表することができた。いずれのテーマも歴史的蓄積があり、わずか1年で重厚な論文を発表することができたのは想定外の事態といえる。 背景には、執筆の機会を与えられたことだけでなく、依頼の前の段階で、学部演習を通じ手詳細な検討を行うことができ、基本的な調査を完了させるとともに、基本構想を明確化できていたことが挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は責任能力と共謀というこれまで研究してきたテーマについて、主要事実の特定についてさらに議論を重ねる予定である。 特に、特殊詐欺について共謀立証の構造を解明する必要性は高く、優先的に取り組む予定である。
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Causes of Carryover |
予定どおりの交付を受けた。前年度までと同様、書籍の購入を中心とし、旅費の使用も見込んでいる。
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Research Products
(3 results)