2020 Fiscal Year Research-status Report
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17K03423
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
樋口 亮介 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (90345249)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 性犯罪 / 共同正犯 |
Outline of Annual Research Achievements |
樋口亮介=深町晋也編著『性犯罪規定の比較法研究』を公刊することができた。本書は、英米カナダ、ドイツ・オーストリア・スイス、スウェーデン・フランス、台湾・韓国及び日本の沿革という形で10個の法域それぞれについて詳細な研究を行い、その10個の法域を横断する形で性犯罪の成否を論じるための基本的な視点をまとめあげたものである。 書籍は比較法研究メインであり、立法のための基礎資料を提供することに主眼を置いている。しかし、それと同時に、我が国の性犯罪の成立範囲が不明瞭であるという現状を認識するとともに、明確化するための基礎を与えるものになる。その実践として、2021年1月開催の刑法学会関西部会において共同研究に参加する機会を与えられ、日本の裁判例において性犯罪の成否を左右している理由を解明する報告を行うことができた。その成果は2021年度に公刊する予定である。
また、法律時報誌上において、特殊詐欺と刑事法上の諸問題と題する特集を組むことができた。特集を企画すると同時に承継的共同正犯について個人として執筆も行うことができた。特殊詐欺をめぐる刑事法上の諸問題は、刑法解釈がたどった誤った方向が裁判例にも悪影響を与えてしまっている危機的状況(共同正犯の成否における因果性への過剰なこだわりと未遂犯を具体的危険犯と読み替えるという沿革的にも理論的にも根拠がない議論)を是正させる最大のチャンスとして、特集レベルでの企画をまとめることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
性犯罪に関する大著を短期間でまとめることができるのはうれしい誤算であった。企画に参加してくれた優れた研究者たちの努力による。 また、特殊詐欺について狭い刑法理論だけではなく刑事法上の諸問題全体について徹底した検討を加えることができたことも想定をはるかに超える成果である。特に、未遂及び共同正犯の理解について、誤った方向性を是正する転換点が示されたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
法学セミナー誌上において「裁判実務と対話する刑法理論」と題する連載枠を作ってもらうことができた。この連載においては、犯罪の成否を画する限界、及び、量刑を左右する視点を明らかにすることが目指されている。本連載の準備にチームを作って全力で取り組む予定である。
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Causes of Carryover |
コロナウイルスの影響により予定されていた出張が全て消滅したため。
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Research Products
(3 results)