2018 Fiscal Year Research-status Report
再犯防止目的による刑事事件の裁判所外処理に関する実証的研究
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17K03425
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
葛野 尋之 一橋大学, 大学院法学研究科, 教授 (90221928)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 起訴猶予 / 訴追裁量 / 再犯防止 / 無罪推定 / 適正手続 / 準司法官 |
Outline of Annual Research Achievements |
起訴猶予制度とも関連させた被疑者弁護のあり方について、日本刑法学会第96回大会において、ワークショップ「被疑者国選弁護制度の拡充と刑事弁護の課題」をオーガナイズした弁護士、裁判官、研究者による報告を受け、それを踏まえて検討を深めた(関西大学、2018年5月27日)。捜査段階において、弁護人が、犯罪事実を自認して、起訴猶予処分を目指すべきか、それとも犯罪事実を否認して、起訴の可能性を受け入れるかという困難な選択に直面すること、弁護方針の決定において被疑者とのあいだにも葛藤が生じうることが明らかになった。 同じく、起訴猶予制度との関連させた被疑者弁護のあり方について、葛野尋之=石田倫識編『接見交通権をめぐる理論と実務』(現代人文社、2018年6月)を刊行し、そのなかで、論文「接見交通権と被疑者取調べ」を発表した。 法制審議会刑事法・少年法部会における条件付起訴猶予をめぐる議論について、同制度の導入は今回は見送られることとなったが、そこに至るまでの過程をフォローした。最近発表された日本語文献についてもフォローした。 2019年2月、英国調査を行い、ロンドンおよびバーミンガムにおいて、資料収集、裁判傍聴、研究者インタビュー、弁護士インタビューなどを実施した。条件付警告制度の存在によって、捜査段階において、弁護人が、犯罪事実を自認したうえで堂処分を受け入れるべきか、それとも犯罪事実を否認して堂処分に同意せず、正式な訴追を受けるべきか、という困難な選択に直面することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本法については、法制審議会において、条件付起訴猶予制度の採用が今回は見送られることとなったが、そこに至る議論の経過をフォローした。また、検察実務における「入口支援」の展開について、それを紹介した雑誌記事などをフォローし、その功罪を検討した。2018年刑法学会ワークショップおよびその準備の過程において、起訴猶予制度、とくに近年の『入口支援』の拡大が被疑者弁護の実務に対しどのような影響を与えているか、、さらには条件付起訴猶予制度が導入された場合、どのような影響が生じうるかについて意見交換を行い、検討を深めた。イギリス調査を行い、被疑者弁護の実務に対して条件付警告巣制度がどのような影響を及ぼしているかを調査した。今後は、文献資料に基づき、イギリス法との比較研究を本格的に深めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
イギリス法との比較研究において、条件付起訴猶予制度の功罪について書かれた文献資料、さらには同制度が被疑者弁護に対してどのような影響を与えているかを分析した文献資料を収集し、分析を進めたい。そこから得られた知見をもとに、条件付起訴猶予制度が導入された場合、日本の被疑者弁護に対してどのような影響が生じうるかを理論的に検討したいと考えている。
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Causes of Carryover |
国内旅費および図書購入の費用を教員研究費から多く賄ったため。今年度は図書購入、とくに洋書購入および旅費に多くの経費を用いる予定である。
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Research Products
(5 results)