2019 Fiscal Year Research-status Report
再犯防止目的による刑事事件の裁判所外処理に関する実証的研究
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17K03425
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
葛野 尋之 一橋大学, 大学院法学研究科, 教授 (90221928)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 起訴猶予 / 再犯防止 / 検察官 / 少年法 / 刑事弁護 / 宣告猶予 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在法改正が提案されている少年法適用年齢の18歳未満への引下げにともない、とくに軽微な犯罪をおこなった18・19歳の「成人」を含む若年者の再犯防止について効果的措置を講じる必要性があるとされたことから、起訴猶予に伴う再犯防止措置として、18・19歳の者については、検察官が起訴猶予とした事件を家裁に送致し、家裁の調査・審判を経て「新たな処分」を課すことができるとし、それ以外の者については、起訴猶予の決定後、円滑に再犯防止措置へとつなげるための措置を起訴猶予決定前から講じることとし、あるいは、起訴・不起訴の決定前に一定の再犯防止措置を行い、その成果を踏まえて起訴・不起訴の決定を行うこととする法制が提案されており、法制審議会・少年法刑事法部会において審議が続けられた。 2019年度は、このような立法動向に注目しつつ、無罪推定、適正手続、責任主義という刑事法原則、当事者主義、公判中心主義という刑事司法の基本構造、被疑者の正当な権利の擁護に徹した刑事弁護という資格から、批判的検討を加えた。これに関して、論文「法適用年齢引下げ提案批判」法律時報91巻12号79-83頁(2019年)、共編著『少年法適用年齢引下げ・総批判』(現代人文社、2020年)を上梓し、そのなかで、「少年法適用年齢引下げ提案の批判的検討」2-24頁を分担執筆した。 また、イギリス法において捜査終了時に選択可能な処分が多様化するなかで、被疑者弁護がどのような課題に直面し、どのような変化を経験したかを明らかにするために、「被疑者の黙秘権と弁護人の効果的援助を受ける権利」大出=川﨑=白取=高田古稀祝賀論文集(現代人文社、2020年予定)を執筆し、入稿した。 その他、起訴猶予の積極活用に代わりうる手段として、「宣告猶予」川出敏裕=太田達也編『新刑事政策講座』(成文堂、2021年)の執筆も準備した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
起訴猶予と結び付けた再犯防止措置の制度化が、少年法適用年齢の引下げと関連させて、法制審・少年法刑事法部会において議論されているが、本年半ばより、少年法適用年齢の引下げについて意見の対立が続き、結論に至らなかったことから、その審議の進捗速度が急落し、大きな進展がなかったため、そこでの議論を踏まえた検討を十分進めることが難しかった。 また、2019年度は、イギリス調査および台湾調査を実施し、そこから得た知見を踏まえて、比較法的研究を進める予定であったが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的拡大のために海外調査を実施することができず、研究の進捗が困難となった。
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Strategy for Future Research Activity |
起訴猶予と結び付けた再犯防止措置の制度化が、少年法適用年齢の引下げと関連させて、法制審・少年法刑事法部会において議論されているところであり、今後は、その審議の進捗を踏まえて、歴史的視点および比較法的視点から、検討を深めていきたい。その成果の一部は、「宣告猶予」川出敏裕=太田達也編『新刑事政策講座』(成文堂、2021年)として纏め、公表する予定である。また、イギリス法における被疑者弁護の現状と問題点については、現在作成中の論文「被逮捕者の弁護人の援助を受ける権利ー弁護人への早期アクセスの保障」寺崎古稀祝賀論文集(成文堂、2021年予定)のなかで論じる。 また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的感染状況を見据えつつ、イギリス調査および台湾調査を実施したうえで、そこから得た知見を踏まえて、比較法的研究を進めることとする。
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Causes of Carryover |
2019度終盤に、2回の外国調査を計画していたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大の影響により、いずれも断念せざるをえなかった。これにより、比較法研究の進捗がはかどらず、やむをえず、次年度に調査の実施を持ち越すことにしたため。
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