2017 Fiscal Year Research-status Report
重大非行事案防止のための多機関連携による非行少年等とその家庭への支援に関する研究
Project/Area Number |
17K03438
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
小西 暁和 早稲田大学, 法学学術院(法務研究科・法務教育研究センター), 教授 (20366983)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 少年非行 / 少年警察 / 学校教育 / 児童福祉 / 少年保護司法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、重大非行事案防止のための多機関連携による非行少年等とその家庭への支援に関し研究を行っており、第1年度は「①資料の収集」、「②実態調査」及び「③検討会の開催」を行った。 まず、「①資料の収集」に関しては、関連する国内外の論文や書籍等を収集し、その資料の整理・分析を行った。 また、「②実態調査」に関しては、「①資料の収集」で得られた分析結果なども踏まえながら、福岡(福岡県・北九州市・福岡市)、広島(広島県・広島市)、大阪(大阪府・大阪市・堺市)、京都(京都府・京都市)、神奈川(神奈川県・横浜市)の関係機関(警察本部・少年サポートセンター、学校・教育委員会、児童相談所及び民間団体)において質問紙・聞き取り調査を行った。また、その後の調査研究の進捗により、多機関連携を積極的に実施しているオランダ及びベルギーにおいても関係機関(オランダの「セイフティ・ハウス」、ベルギーの「ファミリー・ジャスティス・センター」等)での聞き取り調査などを実施した。 さらに、「③検討会の開催」に関しては、上記「①資料の収集」や「②実態調査」を行う毎に連携研究者及び研究協力者も交えて実施し、それまでの研究内容を検討するとともに、今後の方向性について協議した。また、本年度の国内での実態調査の研究結果を報告する場として、2018年1月27日(土)に早稲田大学において公開研究会「『少年を犯罪から守るための機関連携』のあり方」(主催:早稲田大学社会安全政策研究所、警察大学校警察政策研究センター)を開催し、成果を社会に発信した。 これらをとおして、近時のわが国における多機関連携の進展状況とその課題が明らかになったとともに(特に、司法関係における機関連携)、諸外国における取組みとの比較を通じ多機関連携の今後の更なる発展に向けた諸条件(オフィスやデータベースの共用等)も明確化していくことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画調書作成時においては、重大非行事案防止のための多機関連携による非行少年等とその家庭への支援のあり方をできるだけ効率的に検証すべく、第1年度において主に東京都及び東京近郊の対象地域に焦点を当て、調査研究を行うことを予定していた。これについて、神奈川(神奈川県・横浜市)の関係機関への調査研究は遂行したが、それ以外の東京都及び東京近郊の対象地域の調査研究は2017年度に実施せず、研究計画を修正することとなった。というのも、神奈川も含め、2017年度に調査した福岡(福岡県・北九州市・福岡市)、広島(広島県・広島市)、大阪(大阪府・大阪市・堺市)、京都(京都府・京都市)の各地域はいずれも先進的な多機関連携の取組みを実施しており、今後の調査研究にとっても重要な比較対照の基盤となり得るとともに、そうした積極的な取組み事例をできるだけ早期に紹介し社会に還元できると考えられたからである。実際、こうした調査研究の成果は、「研究実績の概要」欄に記載のとおり、公開研究会を通じて2017年度中にいち早く情報発信を行うことができた。研究期間全体を見通すならば、こうした研究計画の修正は効率性に適う形で実施されたものとも言える。 また、2017年度末まで知己の研究者がオランダに在住することとなり、少年非行・児童虐待等において多機関連携の取組みを積極的に実施していることが判明したオランダ及びベルギーの調査研究を行うに当たりコーディネートをしていただける又とない機会が得られた。そのため、前倒し支払を行い、両国への調査研究を実施した。こうした調査研究は、今後引き続き本研究を遂行していく上でも比較法的視座を与えるものであり、最終的に本研究の成果を結実させる際に非常に意義のあるものであると考える。 これら上記事情により、現在までの達成度は「おおむね順調に進展している。」と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
第2年度となる2018年度においては、第1年度の研究実績を踏まえつつ、「①資料の収集」、「②実態調査」及び「③検討会の開催」を行うこととする。とりわけ本年度は、主に関東地方周辺の地域(東京都、川崎市、千葉(千葉県・千葉市)、埼玉(埼玉県、さいたま市)等)に焦点を当て、調査研究を遂行する。具体的には、対象地域の「①資料の収集」を継続して行うが、「②実態調査」については、前年度の調査をパイロット調査として位置づけ関東地方周辺の地域においてそうした調査と継続性のある調査を実施する。また、第1年度と同様、適宜、研究協力者にも出席してもらって「③検討会の開催」を行い、それまでに得られたデータを分析・検証する。 また、第3年度は、前半に第2年度までの調査で不足していた項目の補足を行うべく「補足調査」のみを行う(とりわけ、札幌市等)。第2年度の後半(11月頃以降を予定)では、「④研究成果の取りまとめ」を重点的に行う。なお、研究が当初の計画どおりに進まない場合には、データの蓄積のある北九州市・横浜市・札幌市を優先して調査研究を実施し、それらの調査で得られた新たなデータを踏まえて多機関連携が現在どのような効果を生んでいるかも含め「④研究成果の取りまとめ」を行う。
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Causes of Carryover |
・次年度使用額が生じた理由 本来第1年度の交付額は1,100,000円であったが、国内での実態調査を広範に実施した結果、全てを使い切ってしまった。そこで、「現在までの達成度」欄に記載のとおり、オランダ及びベルギーでの調査研究を実施すべく1,000,000円分の前倒し支払を請求した。2018年3月にこうした調査研究を実施したところ、僅かながら残額が生じたため、「次年度使用額」が生じた次第である。 ・使用計画 「今後の研究の推進方策」欄にも記載のとおり、2018年度においては、第1年度の研究実績を踏まえつつ、主に所属研究機関からも近郊の関東地方周辺の地域に焦点を当て、調査研究を遂行する。前倒し支払を行った結果、第2年度の交付額が400,000円となったため、「次年度使用額」と合わせて活用し、こうした調査研究を行っていくことにしたい。
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Remarks |
①小西暁和、「児童相談所を起点とした機関連携」に関する調査報告、公開研究会「『少年を犯罪から守るための機関連携』のあり方」(主催:早稲田大学社会安全政策研究所、警察大学校警察政策研究センター)、2018年1月27日、早稲田大学(東京都新宿区) ②宮古紀宏、「学校・教育委員会を起点とした機関連携」に関する調査報告、公開研究会「『少年を犯罪から守るための機関連携』のあり方」、同上
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