2018 Fiscal Year Research-status Report
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17K03443
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山本 周平 北海道大学, 大学院法学研究科, 准教授 (10520306)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 不法行為法 / 厳格責任 / 危険責任 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は,前年度に引き続きドイツ法の検討からスタートしたが,それと関連して行っていたヨーロッパ不法行為法に関する検討の中で,ヨーロッパ不法行為法原則(Principles of European Tort Law)における危険責任の規定(同原則5:101条「異常に危険な活動についての責任」)が,アメリカの第3次不法行為法リステイトメント(Restatement of the Law Third, Torts: Liability of Physical and Emotional Harm)の規定(20条)から(基本的な制度設計の点で,ドイツ等の大陸法諸国とアメリカとの間に重大な相違があるにもかかわらず)強い影響を受けていることを1つの契機として,アメリカ法をも視野に入れる必要があるのではないかと考えるに至った。そこで,当初の研究計画の範囲を超えるものの,アメリカ法についても一定程度のリサーチを実施した。 検討はなお途上であるが,アメリカ法における「異常に危険な活動(abnormally dangerous activity)」についての厳格責任は,判例においてはかなり限定的にしか適用されず,「本の中の法(law in the books)」と言われていることさえあるものの,学説上の議論としては,厳格責任が,どのような理由から,どのような場面で適用されるべきかといったことが活発に議論されており,一方では法と経済学の知見を用いる潮流と,他方では一定の哲学的・規範的理論を基礎に置く潮流が対立している。こうした議論の中には,ドイツ法では見られないタイプのものも多く,これによってドイツ法の議論を補完することが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では予定されていなかった領域も検討範囲に入れることにはなったものの,基本的な文献についてはおおむね順調にリサーチが進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画では予定されていなかったアメリカ法の検討について,この研究課題の中でどこまで扱えるかということについては,なお未知数であり,まとめ方に工夫を要すると思われる。文献調査のほか,聞き取り調査も行ったうえで,柔軟に対応したい。
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Causes of Carryover |
次年度は最終年度であり,成果のまとめを前に東京ないし京都で複数回の研究報告を実施する予定であることから,その際に使用する旅費を十分に確保するため,本年度は経費の節減に努めた。残額については,補充的な資料収集のための書籍費のほか,研究報告の際の旅費として使用したい。
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