2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K03447
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
直井 義典 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 准教授 (20448343)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 物的代位 / 質権 / 集合物 |
Outline of Annual Research Achievements |
フランスの集合物質権における物的代位論の利用状況について検討を加えた。担保目的物の変動にも拘らず担保が継続すると考えることの重要性は倒産法との関係で理解されている。こうした担保の継続性の正当化根拠として物的代位が持ち出されるようになってきている。 フランスでは2006年の担保法改正によって代替物・集合物を質権の目的とできることが明らかとなったが、構成要素の変動に関しては代替物については明文があるのに対して集合物については明文がない。しかし、これを否定する見解は見られない。この問題については、1915年破毀院判例がすでに集合物における担保目的物の変動を肯定していた。ただし、そこでは物的代位によって変動が正当化されており、リヨン-カーンを初めとする破毀院判決の評釈者は、こうした理由づけについてはこぞって反対していた。 ところが2006年の担保法改正以後は、質権の目的たる代替物の変動を物的代位によって正当化する見解ばかりでなく、集合物の変動についても物的代位によって正当化する見解が一部に見られるようになった。その理由としては、担保目的物である代替物の変動について明文規定が置かれたことと並んで、物的代位の基礎理論に変容が見られたことも影響していると考えられる。すなわち、19世紀に見られた擬制説に基づき、物的代位は明文規定がない場合以外には認められないとの見解がほぼ放棄され、充当などの当事者意思に基づいた物的代位の正当化が定着したことによると考えられるのである。 以上の考察は、わが国の集合動産譲渡担保に関する議論と対比したときに、興味深い。わが国の議論では、担保目的物の変動をいかにして説明するかという視点がやや弱い。フランスの議論は、個々の個性要素に担保権の効力を及ぼしつつも担保権の継続性を肯定するものであり、分析論と集合物論とを架橋する可能性を秘めた議論であると評価できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フランスの集合物を目的とする質権における構成要素の変動を正当化する論理として物的代位を取り上げた。平成29年度の課題は、フランスにおける代替可能物の担保化に関する20世紀初頭以来の判例ならびに2006年担保法改正以降の学説の分析を通じて、担保設定者の一般債権者との関係での優先性保持局面を分析することにあった。こうした課題からして、平成29年度の研究はおおむね順調に進展しているものと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後についても担保目的物の変動につき、倒産手続との関係で研究する予定である。 集合動産譲渡担保における担保目的物変動の正当化根拠に関するわが国の学説を分析し、物的代位による正当化が有力化しつつあるフランスの状況と比較する。また、倒産局面も含め、フランスにおいて目的物変動型の担保権の効力(対抗要件具備時点)が問題となった判例の分析を継続する。 また、物権の消滅事由という側面からの、担保権の継続性に関する研究を行うことも予定している。
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Causes of Carryover |
書籍代金の端数である。ごく少額であり、翌年度の書籍購入費に加算して使用する予定である。
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Research Products
(1 results)