2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K03455
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
合田 篤子 金沢大学, 法学系, 教授 (50361241)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 後見 / ドイツ / 家族 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、変容する家族の実態を分析すると共に、憲法学から見た家族論の議論も踏まえつつ、未成年後見や成年後見制度の将来のあり方を検討することにある。 当初の研究実施計画によれば、平成29年度は、まずは、憲法学における家族に関する研究について文献研究を中心に行い、わが国での問題状況を確認するために、未成年後見に関する裁判例や学説を整理し、改正による影響について分析を行うと共に、ドイツで公表予定となっている未成年後見改正法草案についても、公表され次第、分析を行う予定としていた。 しかし、ドイツでの未成年後見改正法の議論に進展は見られず、29年度はまずは、2016年8月にドイツ連邦司法消費者保護省が公表した「後見法の改正に関する討議部分草案」を分析することにした。討議部分草案は5つの方針として、①身上配慮のいっそうの強化、②個人により執行される後見の人的資源の強化、③後見人の選定、④財産配慮の非官僚化、⑤後見制度の体系化および現代化を挙げ、具体的な条文案も示している。分析の結果、現在の法改正を目指す動きは、社会における後見制度の果たすべき役割の変質が大きく影響している点にあると考えた。ドイツでもかつては、孤児や婚外子のための後見が重要な役割を果たしていたが、今日では、児童虐待等のケースにおいて家庭裁判所が親の配慮権(親権)を剥奪した子の権利保護のための後見が必要とされるようになっている。このような傾向は日本でも同様であり、社会における家族の果たす機能の変化に現在の後見制度が対応しきれているのかについて、ドイツでの考え方も参考にしながら、引き続き検討を行っていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「研究実績の概要」でも述べたように、当初はドイツ法の分析のみならず、憲法学における家族に関する研究について文献研究を中心に行い、わが国での問題状況を確認するために、平成23年の民法改正後の未成年後見に関する裁判例や学説の議論を整理し、改正による影響について分析を行う予定でいた。しかしながら、これらの作業については、家族社会学や憲法等の文献収集から着手する必要もあり、研究報告あるいは論稿として完成するほどには、十分分析を進めることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、29年度に十分検討することができなかった家族の変容という実態をデータ面からも明らかにし、憲法学からみた家族と国家の関係に関わる議論を整理することに努めたい。あわせて、平成29年度に紹介を行ったドイツの未成年後見法に関する討議部分草案が今後、どのような改正草案として発展していくのか、その動向に注目していきたい。これらの分析を踏まえ、ドイツにおいて、家族の変容が未成年後見や世話制度の運用や改正の動きにどのような影響を与えているのかについて分析するためにも、文献研究の他、現地調査を実施する。さらに、未成年後見法改正法の議論状況や改正後に予想される問題状況等についても研究者からヒアリングしたいと考えている。もっとも、ドイツでの調査は法改正の動きとも関わるため、現時点では時期は未定である。
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Causes of Carryover |
必要な書籍の購入費としては不足したため次年度使用額が生じた。30年度の物品費として使用予定である。
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