2017 Fiscal Year Research-status Report
中小企業の早期再生促進と保証規制のあり方に関する比較法研究
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17K03461
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
齋藤 由起 大阪大学, 法学研究科, 准教授 (40400072)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 保証 / 企業再生 / 倒産法制 / フランス法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、民法(債権関係)改正が実現し、第三者個人保証人の保護規制の輪郭が定まりつつある現在において、民法上の保護から従来排除されてきた経営者保証人の保護規制のあり方を検討することを目的とする。 平成29年度は、経営者保証人の平時における保護の可能性と限界を明らかにすべく、改正民法で新設された個々の保証人保護規定の解釈の検討を行い、論文を公表し、また、共同執筆の注釈書、コンメンタールや教科書類の執筆も行った。その中では、改正民法では要保護性を考慮した保証人個人の保護にとどまっており、中小企業の早期再生等の観点はソフトローに委ねられるという日本の個人保証規制のダブルスタンダードを指摘した。 また、フランスの消費法典・倒産法制における個人保証規制の分析を行い、次のことを明らかにした。まず、自然人保証人の過剰債務を予防する規制は、事業の失敗に直面した経営者やその近親者の個人資産を保護することによって、保証引受けに対する躊躇を緩和し、企業の設立・存続のための資金調達に必要な保証引受けを奨励し、究極的に経済の活性化を追求するものとして位置づけられる。次に、主債務者たる企業が経営難に瀕した場合において、1984年以降の倒産法改革の中で、企業の早期再建に向けた一手段として保証の付従性を操作することにより、経営者が企業の経営難に対処するのが早ければ早いほど自然人保証人が獲得できる特典が大きくなる仕組みが構築されているが、この仕組みも、主債務者たる企業の債権による経済活動の維持と活性化そして雇用維持という社会経済全体の利益を追求するものである。 フランス法の検討より、当事者間の利益調整を超えて社会全体の利益のための個人保証規制立法という視点が日本の経営者保証規制を構想する際の新たな視点になることを指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、改正民法で新設された個々の保証人保護規定の解釈の検討を行った。また、従来より個別既定の検討を行っていたフランス消費法典・商法典上の規定を包括的に見渡して上記のような視角を析出して、日本における経営者保証規制を考えるための視座を提示した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、2017年に公表されたフランス担保法改正草案の検討によるアップデートを含めてフランス法研究を深化させる。日本法についても、改正民法規定のほか、経営者保証ガイドラインの運用状況の検討を継続する。 平成29年12月から平成31年1月末まで、産前産後休暇及び育児休業により本研究課題の遂行を中断する予定である。育児休業明けに本研究課題を再開する予定である。
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Causes of Carryover |
産前産後特別休暇による中断に基づき、予算執行をできない期間があったため、平成29年度に未使用額が発生した。育児休業の終了による研究再開後に使用する予定である。
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Research Products
(4 results)