2019 Fiscal Year Research-status Report
中小企業の早期再生促進と保証規制のあり方に関する比較法研究
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17K03461
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
齋藤 由起 大阪大学, 法学研究科, 准教授 (40400072)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 保証 / 倒産 / 経営者保証ガイドライン / フランス / 分別の利益 / 共同保証 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、フランスにおいて2017年9月に公表された「担保法改正準備草案」(アンリ・カピタン協会)における人的担保法部分を分析し、従来のフランス保証法の動向における位置づけを明らかにしたうえで論文として公表した。 フランスの倒産手続法においては、経営難にある会社の早期再生という政策目的の達成のため、すでに人的担保提供者と他人の債務のための物的担提供者が同様に扱われる場面が見受けられたところ、同準備草案において、従来のフランス判例が否定してきた「物上保証」概念の規定の新設が提案された。これにより、他人の債務のために責任を負うという点で共通する人的保証人と物上保証人について、できる限り統一的な処遇を与えようとする機運が生じてきた。保証人の保護規定をはじめとする個々の保証に関する規定の物上保証への類推適用の可否については、準備草案は明示しておらず、学説上の議論が活発化してきたところである。このような観点やフランスにおける議論の動向は、物権債権峻別論の下で物上保証人と人的保証人が厳然と区別されてきた日本法にとって、中小企業の再生促進という観点から担保法制を考えるうえで、非常に示唆深いものである。 日本法について、改正債権法における保証に関する規定について検討を行った。とりわけ、日本学生支援機構の奨学金返還債務について社会問題化した共同保証における分別の利益に関する法理論について、平成29年の債権法改正によって改正が行われなかったことの意義を考慮に入れたうえで検討を行い、あるべき解釈論を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2017年9月に公表されたフランス担保法改正準備草案に関する検討を行い、最新の議論をフォローして論文として公表した。 平成29年債権法改正に伴う保証法上の新たな解釈問題についても、個々の規定について具体的な検討を進めながら、論文を公表し、また、現在公表準備中のものもある。 なお、本年度、研究報告を予定していたフランス・モンペリエ大学における国際シンポジウム「担保法の展開」において、日仏の最新状況を踏まえたうえで日本の人的担保制度の展開について報告し、参加者らと意見交換をする予定であったが、当初の予定日(2019年12月13日)は、フランス国鉄のゼネストによって延期され、延期後の予定日(2020年3月27日)は、コロナウィルスの流行によって再度延期となり、実現しなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
フランス担保法改正準備草案をめぐる最新の議論についてフォローを継続する。また、同国における担保法・倒産法の政府による改正草案が今年度中に発表されることが予想されているので、入手次第、検討を開始したい。また、日本においては、改正債権法が施行されたので、新たに生じる実務上の問題点に目を配りたい。 本年度報告予定であった国際シンポジウム「担保法の展開」について、2度の延期がなされた後、現時点で新たなシンポジウムの予定日は決定されていない。改めて開催が決定すれば、報告と意見交換の場として生かしたい。また、それが実現しなかったとしても、準備した研究成果について、公表の場を模索したい。
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Causes of Carryover |
フランス・モンペリエ大学にて開催予定であった国際シンポジウムが延期となり、外国出張をキャンセルした。新年度に改めて開催されることが決定した際の旅費等として使用する予定である。
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Research Products
(4 results)