2020 Fiscal Year Research-status Report
中小企業の早期再生促進と保証規制のあり方に関する比較法研究
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17K03461
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
齋藤 由起 大阪大学, 法学研究科, 准教授 (40400072)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 保証 / 経営者保証 / 情報提供 / フランス担保法改正 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、とりわけ、平成29年(2017)年民法(債権法)改正によって新設された保証人に対する情報提供義務を、一般的な情報提供義務との関係・位置づけにおいて検討した。これにより、個人保証人に対する契約締結前の情報提供義務(465条の10)については、保証契約を締結するか否かを決定づける情報(保証リスクの内容と実現可能性)の提供を内容とし、債権者との関係においては保証人自身がその評価ミスによる不利益を負うべき情報であることから、改正法も基本的にその原則を貫き、事業債務のための個人保証の場合にのみ保証委託者である主債務者を義務負担者として、悪意・有過失の債権者にのみその評価ミスの不利益を転嫁する構造としていることを明らかにした。また、保証契約締結後の情報提供義務(458条の2,458条の3)については、従来認められてきた契約上の善管注意義務としての情報提供義務や契約の内容実現に向けた情報提供義務とは異なり、保証契約の内容実現=担保目的の実現を目的とするのではなく、保証人の責任拡大防止に向けられたものであることを明らかにし、債権者にこのような情報提供義務を負わせることは、保証の未必性と無限責任性、そして補充性に照らして債権者が負担すべき、保証人の負担を重くしないようにする協力・配慮義務の具体化として正当化されるべきことを提言した。 また、現在進められているフランス担保法改正について、2017年9月に公表されたアンリカピタン協会担保法改正準備草案の検討作業と条文訳の公表作業を進めており、また、2020年12月及び2021年1月に公表されたフランス司法省準備草案の検討も進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年民法(債権法)改正による新設・改正規定のほか直接改正が加えられなかったけれども関連する規定の変更によって解釈に影響を受ける規定も含めた、保証法に関する新たな解釈問題について個別の問題ごとに検討を進めて、論文やコンメンタール等の形ですでに公表したものが複数あり、また、現在執筆中のものもある。 フランス担保法の改正作業についても、最新の情報の検討・分析及び翻訳作業を継続し、わが国への最新情報の発信も行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
改正民法の施行後1年を経過し、また経営者保証ガイドラインの施行から7年経過した現状も踏まえて日本の個人保証規制をめぐる現況を整理するとともに、フランス担保法については、来るべき改正の基礎となる2017年アンリカピタン協会担保法改正準備草案の条文訳を公表し、2021年5月中には担保法改正オルドナンスが成立する見通しであるので、2017年準備草案と、成立するオルドナンスとの比較検討を行って、フランス担保法における人的担保法・個人保証規制について、倒産法との関連も含めて分析を行い、日本法への示唆を得る。
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Causes of Carryover |
フランス・モンペリエ大学で開催が予定され、研究代表者が日本の人的担保法の展開について報告予定であった国際シンポジウム「担保法の展開」(当初の予定日2019年12月13日〔フランスゼネストのため延期〕、1回目延期後予定日2020年3月27日〔新型コロナ感染症急拡大のため延期〕)が、2020年12月11日に延期されていたが、新型コロナ感染症の感染状況が改善せず、再度の延期となった。そのため、予定していた旅費の支出がなくなり、未使用金が発生した。頻度が増えていくオンラインによる研究打ち合わせやデータベースを利用した情報収集に対応できるよう、パソコン機器の購入に充てる予定である。
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Research Products
(3 results)