2022 Fiscal Year Annual Research Report
Promoting early rehabilitation of SME and protection of guarantors
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17K03461
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
齋藤 由起 北海道大学, 法学研究科, 教授 (40400072)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 保証 / 保証人保護 / 債権法改正 / フランス法 |
Outline of Annual Research Achievements |
フランス法につき、今年度は、前年度より準備していた2021年9月に成立した担保法改正オルドナンスの条文及び解説について、片山直也教授(慶応義塾大学)との共訳により公表し、前年度より継続して、保証新規定の内容や学説上の議論について検討を続けた。 研究期間全体を通じて、特別法や判例により多層的に発展してきた自然人保証人保護に関する手書記載要件、比例原則、契約締結後の情報提供義務などのルールが、2017年の準備草案を経て、2021年改正により民法典に統合されていく過程と完成した規定を検討し、立法者意思を明確に把握することができた。これにより、フランスでは、自然人保証人というカテゴリーを民法上一律に保護していること(大半を占める経営者保証人を想定しているとも言いうる)、一方で手書記載要件を緩和し、他方で比例原則の内容・適用範囲を拡大していることから、保護の手法として手続規制よりも内容規制を重視する傾向があることが明らかになった。 日本法につき、改正保証法・経営者保証ガイドラインの分析を継続した。特に重要な動きとして2022年12月に金融庁が策定した「経営者保証改革プログラム」に注目した。改正民法では、フランス法とは対照的に、保証人の資力に配慮した内容規制によらずに、必要な情報を欠く第三者保証人に契約締結時の情報提供を保障する保護の手法を採ったが、ガイドラインにより既に第三者保証人は金融機関の事業融資から実質的に排除されており、民法上の新規定の実益は大きくなかった。プログラムでは経営者保証の徴求自体を抑制する方向性が明確に示され、これにより、日本では、私的自治に基礎を置く保護から排除される経営者保証人については、ソフトローが、中小企業の早期事業再生等の政策実現のツールとして保護(排除)を引き受けることによって、個人保証人の過剰債務問題の解消を実現しつつあることが明らかになった。
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