2017 Fiscal Year Research-status Report
民事訴訟における不利益変更禁止原則の再構成ー296条1項の検討を通じてー
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17K03462
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
八田 卓也 神戸大学, 法学研究科, 教授 (40272413)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 民事訴訟法 / 控訴審 / 不利益変更禁止 |
Outline of Annual Research Achievements |
現行日本民事訴訟法296条1項の沿革を、日本法・ドイツ法とさかのぼった結果、以下の知見を得た。 ①現行民事訴訟法296条1項の沿革は、テヒョー草案463条(もしくは明治民事訴訟法411条)にさかのぼり、テヒョー草案から現行法に至るまで、法意を変更する意図は看取できないこと。とりわけ、大正民訴改正において「ノミ」の挿入と「更ニ」の削除という大きな変更を受けているが、いずれも、ドイツ法の"von neuem"の誤訳に基づく可能性が高いこと。②テヒョー草案463条(もしくは明治民事訴訟法411条)が1877年ドイツ民事訴訟法487条に根差すこと。③1877年ドイツ民事訴訟法487条がハノーヴァー草案583条に起源を有すること。ハノーヴァー草案583条から1877年ドイツ民事訴訟法487条に至るまで、法意を変更する意図は看取できないこと。そして、ハノーヴァー草案583条のもととなった条文案は、「不服申し立ての限度で」という限定を有しておらず、もっぱら、控訴審が「新たに」審理をすることを規定することに主眼があったこと。 この研究成果は、第一に、"von neuem"の語の誤訳に基づく大正民訴改正における法改正が現行法の規律の決定的要因となったと考えられることを指摘するものであり、現行296条1項の規律の非合理性を示唆するという意義を有する。第二に、現行民事訴訟法296条1項の淵源がハノーヴァー草案583条にあることを突き止めるものであり、現行民事訴訟法296条1項の淵源を明らかにするという意義を有する。 第一・第二のいずれの意義についても、いずれもこれらの内容を明らかにした研究成果はこれまで公表されておらず、今まで明らかとなっていなかった事柄を明らかにするものとして、新規性・重要性を有する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
現行民事訴訟法296条1項についての日本法・ドイツ法の解釈論の現況を明らかにする作業はほぼ完全に終了した上、30年度に予定していた日本法の沿革をたどる作業だけでなく、ドイツ民事訴訟法の沿革をさかのぼる作業にまで一定程度踏み込むことができているから。
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Strategy for Future Research Activity |
ドイツ民事訴訟法の沿革をたどる作業を継続するだけでなく、時間的に余裕ができたことから、他国(とりわけ独自の発展を遂げたとされるスペイン)についても手を広げ、控訴審における審判がどのように規律されているかを検討する。そのため年度のできるだけ早い時期に海外出張を行う。
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Causes of Carryover |
予定した国内出張をしないで文献収集をすることができたため。
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Research Products
(7 results)