2017 Fiscal Year Research-status Report
遺言代替アレンジメントを介した遺産承継における財産の帰属についての民事法的規律
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17K03464
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
岩藤 美智子 岡山大学, 法務研究科, 教授 (70324564)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 遺言代替 / 遺言代用信託 |
Outline of Annual Research Achievements |
アメリカ法における遺言・遺言代替制度、すなわち、生命保険、退職年金口座[pension accounts]、多数当事者銀行預金口座、撤回可能生前信託[revocable inter vivos trust]、合有財産権[joint tenancy]など)の制度概要、及び、実際の用いられ方を調査し、これらの制度について、行為者による撤回権・変更権の留保を通した目的財産に対するコントロールに着目して、実質的な遺産承継のタイミングについて考察を行った。その際、これらの制度における実質的な遺産承継のタイミングと情報開示請求権の取得のタイミングとをリンクさせる規律(撤回可能生前信託が委託者の死亡により撤回不可能となった場合に、受託者は、受益者や委託者の相続人に対して、信託条項の完全なコピイを提供しなければならないとするCalifornia Probate Code 16061.5)のあることを発見した。また、アメリカ法において、夫婦別産制を採用する州と、共有財産制を採用する州、それぞれにおいて、死亡配偶者の財産に対して推定相続人の有する権利ないし権限について調査した。さらに、生存配偶者の遺留分に対応する権利(選択的相続分)に関する統一検認法典(UPC)の規律および判例法も含めて各州の規律内容を検討した。また、アメリカ法における被相続人の債権者の権利についての検討を行った。具体的には、アメリカ法における遺言および遺言代替を介した遺産承継が行われる局面での、行為者の債権者の権利(目的財産の行為者の責任財産構成性)について、例えば、遺言代替の一種で ある撤回可能生前信託の目的財産は、委託者が死亡するまで(撤回可能である限り)委託者の責任財産を構成するという規律(統一信託法典§505・第三次信託法リステイトメント§25参照)をめぐる議論状況・判例の状況などについて、調査・検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
29年度の研究計画で、当初予定していたアメリカ法についての研究を、予定通りに行うことができているため。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通りに、平成30年度には、ドイツ法について検討を進める。具体的には、ドイツ法における遺産承継のための諸制度の検討、すなわち、ドイツ法における遺言と遺産承継のための信託的譲渡の諸制度(先位・後位相続[Vor- und Nacherbshaft]、共同遺言[gemeinschaftliches Testament]、相続契約[Erbvertrag]、先取相続[vorweggenommene Erbfolge]など)の実際の用いられ方を調査する。また、これらの制度について、承継対象となる財産に対する被相続人の権限の大小(生前ないし死因処分の徹底度)と遺留分(義務分)減殺請求権対象性とをリンクさせる判例・学説の議論について検討を加える。
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Causes of Carryover |
29年度に予定していたアメリカへの調査研究が、先方の都合により行えないこととなったため、30年度に行う予定としているため。
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Research Products
(1 results)