2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K03465
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
油納 健一 広島大学, 法務研究科, 教授 (20325236)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 不当利得 / 使用利益 / 使用 / 知的財産 / 損害賠償 / 侵害 / 無体利益 / 無形利益 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、自動車・建設機械のような“時間の経過による価値減耗が著しい物”について、本体の価値減耗分も「使用利益」の範囲に含まれるかを明らかにした。すなわち、“時間の経過による価値減耗が著しい物”については、「使用利益」の範囲を狭義に捉え、目的物本体の価値減耗分は「使用利益」の範囲に含まれないとの結論に達した(拙稿「不当利得法における「使用利益」の範囲(1)~(8・完)」広島法学37巻2号63-79頁(2013年)、38巻2号1-31頁(2014年)、39巻1号1-15頁、2号1-20頁(以上、2015年)、40巻1号25-43頁、2号1-8頁(以上、2016年)、41巻1号1-18頁、2号1-16頁(以上、2017年))。
つぎに、消費利益・譲渡利益(代償物)・営業利益と「使用利益」の関係を検討し、その関係を明確にした上で、「使用利益」の意義を明らかにした。すなわち、「使用利益」の意義は、“物から直接的に生じる利益であり、その利益は消費利益又は譲渡利益(代償物)のような物自体の利益及び営業利益のような個人的な能力・給付の成果によって得られる利益を含まない”と捉えるべきとの結論に達した。
なお、本研究の課題が、“不当利得法に基づく知的財産権保護システムの構築”であるにもかかわらず、平成29年度にあえて"有体物使用利益の法的性質"について研究したことには理由がある。すなわち、"有体物の無断使用"の場合と"権利の無断使用"の場合(知的財産権侵害の場合)とは、物と権利の違いがあるのみであり、問題の本質にほとんど差異がない。そこで、"有体物の無断使用"について蓄積された研究を応用することによって、"権利の無断使用"について適切な解決方法を探ることは、本研究においてとりわけ重要な意義があった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、計画通り研究を遂行することができたから。
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Strategy for Future Research Activity |
侵害利得における“有体物の無断使用”に関するRG・BGH判決と不当利得法学説(差額説・割当内容説)をすべて収集した上で詳細に分析・検討し、“侵害者の返還義務の対象は何か”・“侵害者の「使用利益(使用料)」をいかに算定するか”という二つの点を明らかにする。検討の対象を1970年以前の学説に限定し、必ず本年度内にこの作業を完了させる。
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Causes of Carryover |
図書費が当初予想していた金額よりも安価であったため。残額は、次年度、図書費として使用することを予定している。
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