2019 Fiscal Year Annual Research Report
A Fundamental Research on the Correctness of Civil Judgments
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17K03467
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
上田 竹志 九州大学, 法学研究院, 教授 (80452803)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 民事訴訟 / 裁判 / 正しさ |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、2018年度から分析を開始した諫早湾干拓事業関連紛争における裁判の正しさについて、研究を進めた。この問題については、社会的言説の収集というアプローチが高度に政治的な対立の分析に立ち入ることになり、研究アプローチを変更する必要に直面していたところ、上記紛争に関連する訴訟の判決文を民事訴訟法学的見地、法社会学的見地の双方から分析を行うアプローチへと変更を行った。そこで、開門請求権者側の訴訟代理人弁護士へのインタビュー等を通じて情報を収集し、樫澤秀木教授(佐賀大学)が主催する上記紛争の研究グループで報告するなど、私見につき検討を経た後、上田竹志「いわゆる「誤った判決」をめぐる一試論──平成二二年一二月六日福岡高裁判決を起点とする一連の裁判について──」法政研究86巻4号(2020年)として研究成果をまとめた。上記論考では、①いわゆる「誤った判決」は、社会的に複雑な文脈に置かれた訴訟を担当する受訴裁判所により、判決の規範的正統性と社会的正当性との相克の中で生み出されることもあること、②当事者が判決の法的誤りを是正するインセンティブを常に持つとは限らず、それゆえ誤った判決がそのまま通用する事態もあり得ること、③誤った判決は法的な脆弱性ゆえに、事後的に手続を再開する可能性を留保し得ること、④再開された手続を担当する裁判所は、その時々で自身が考える実体的正当性を重視する傾向にあること、を確認した。 なお、上記紛争に関する最二小判令和1・9・13裁時1732号1頁については、上田竹志「(判例評釈)実体法上、権利の存続期間を超えた期限・期間の付された将来給付判決に対する 請求異議の訴え」新・判例解説Watch(民事訴訟法111)にも、民事訴訟法学の見地から判例評釈を公表した。また、吉岡剛彦ほか編『作動する法/社会』(ナカニシヤ出版・2021年刊行予定)にも論考を提出した。
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Research Products
(2 results)